兵庫県東部を代表する神戸市交通局は営業所ごとに方向幕が異なるが、そんな事例は他に聞いたことがない。このような違いが生まれるのは使われるバスメーカーの違いなのか? それとも路線による違いなのか? 神戸市交通局で使われる様々な方向幕を解説する。
(記事の内容は、2020年5月現在のものです)
執筆・写真(車両を除く)/高木純一
※2020年5月発売《バスマガジンvol.101》『方向幕の世界』より
■分割式と一体式、定義的なものが見当たらない!?
前面幕が分割式、という事業者は全国的に数社あるが、全車両が分割式幕ではないという事業者は恐らくここだけであろう。もちろん年式による境で一体式と分割式が存在する例はあるが、営業所単位でどちらも存在する事例はほかにはない。
神戸市営バスでは垂水・西神の両営業所と一部の中型車、小型車が前面一体幕を採用している。車種でいえば大型車の日野ブルーリボンが一体幕式だ。もちろん転属をすれば分割幕式に改造されるが、同局の転属はほとんど無いためかなりのレアケース。
同じ日野でも松原営業所に配置されていた西工車体製の車両は分割式、とメーカーによる統一感は無い。また中型車でも須磨営業所に居た2台だけが一体式で大型車は分割式、という複雑な例もある。
中型車は路線限定の専用車のためコマ数が少ないから一体幕なのか? とも思うが、西神営業所は100コマに迫る内容なのに一体式なのだ。
前面幕に関しては以前にも触れたが、幕の裏側にも鏡文字で同じ内容が印字されている。これは運転士が車内側からどのコマなのかを確認する小窓を見たときに分かりやすくするための同局だけの特徴だ。
側面幕は小型車を除いて早い時期からスーパーワイド幕を採用している。この側面スーパーワイド幕のみ系統番号が丸囲いになっている。路線ごとに色々な表示方法があり、魚崎営業所はローマ字併記のある横書きで系統番号枠が四角い。
■途中どまりの路線に「(止り)」と表示する親切な仕様
中央営業所の整理券方式の路線は経由地を書かずに「整理券方式」を主張、西神営業所のは経由地を前面と同じ簡素化し大きく表示、等と多彩である。一部のコマには挿絵が描かれていた。
なお、側面幕は後面幕と連動する仕様で、相互表示のコマはU形、片道表示はL形、循環はO形、とレイアウトが異なる。後面幕も側面と同じように相互表示は両方の起終点のみを、片道表示では経由地を縦書きに書くという異例な仕様を採用している。
循環は上下幅が狭いにもかかわらずしっかりO形のレイアウトになっている。側面幕が簡素なレイアウトなら後面幕も簡素、と内容バランスを共通に保っている。
印刷色は行先は黒、系統番号と矢印色はオレンジを基本としているが、一部系統に青や緑を使用し、系統番号が青なら経由地の矢印も青、と大変わかりやすくしている。さらには青ベタと緑ベタコマも存在。途中どまりの路線には「(止り)」と大きく記載する。途中で終了する表示を大きく書く事業者は珍しい。
表示機は関西ならではの交通電業社式を採用し、方向幕も同社印刷のものを使うが90年代後半になると前面幕だけは関西S社製の幕を採用。1台の中で2社の幕が存在するのもなかなか無い。
系統番号幕表示機は電動式だが他社とは違って側面幕や後面幕との連動ではない。あくまで系統番号のみの指令で動くため指令機も営業所仕様専用のものを搭載していた。
【画像ギャラリー】前面幕は分割式と一体式が混在 側面幕はスーパーワイド幕 神戸市営バスの方向幕(9枚)画像ギャラリー