バスの行先を示すLED表示機が普及し、手軽に表示を作ることができるため各事業者では挿絵の入った行先表示をさせるところが増えてきた。
しかし従来の方向幕でも挿絵の入った方向幕が存在する。今回はそんな面白い表示の方向幕をご紹介する。
文/写真:高木純一(バスマガジンvol.81/2017年刊より)
【画像ギャラリー】解りやすさに効果アリ!! 楽しい挿絵入り方向幕
LED全盛のいまでも幕式の挿絵は美しく、興味深い
路線を限定させない挿絵の入った表示で一番多く見かけるのは「深夜バス」の表示だ。川崎鶴見臨港バスと京都市交通局は月の絵、国際興業バスと阪急バスなどは流れ星の絵が深夜バスの文字とともに描かれている。
特に東京都交通局はMN25(ミッドナイト25の意味)の文字と共にフクロウの絵が書かれているのが面白い。このほかDREAM LINE 01系統に魚の絵、梅01系統に梅の絵、旧虹01系統に虹の絵、虹01系統の側面幕にレインボーブリッジの絵が描かれており、挿絵の宝庫であった。
その次に多いのは「車いす対応」の表示だ。国際興業バスは割と早い時期にリフト付きバスの運行を開始した。
その車両の方向幕には「リフトバス」の文字と共に車いすの挿絵が印刷されていた。ただ全コマではなく、リフトバス運用指定系統のみであるが、もともとリフトバスはダイヤ指定で系統も運用も固定されているため、専用の方向幕を用意していたようだ。この表示は横浜市交通局のリフトバスにも採用されていたが、側面幕は通常車両と同じ物だった。
また国際興業バスは全国でもめずらしい「ノンステップバス」の表示も方向幕で行っていた。これは側面幕のみで前面・後面は車いすマークのみが描かれている。側面幕の専用系統コマには「スロープ付きノンステップバス」と経由地の上に書かれており、車いすのマークもスロープ板が付いた挿絵に変わっておりこだわりを感じる。また同社ではサッカー輸送の臨時コマに、カラーコマにサッカーボールの挿絵が描いている。
幕の挿絵の中にはシール貼りで対応する例もあり楽しい
伊丹市交通局は荒牧バラ公園行きのコマにバラの絵が書かれており、今でもLED表示機で表示されている。また臨時系統などで西鉄バスは福岡ドームの絵が書かれていた。各地で100円バスが流行った時、「100円玉」の挿絵を描いた事業者が多数出現した。
渋谷区のコミュニティバス「ハチ公バス」も初期は方向幕であったが、その幕に犬の肉球の挿絵が書かれていた。神戸市交通局には側面幕のみだが、特定の系統でポートタワーの挿絵や船の挿絵が描かれていた。阪急バスにも挿絵コマがあり、園田競馬や西宮戎の臨時輸送のコマには馬やエビス様の挿絵入りであった。
奈良交通では自由乗降区間の設定のある系統には、人が手を挙げている挿絵が書かれている。宮崎交通やいわさきグループでは、空港行きに飛行機の挿絵などピクトグラム表示を採用している。遠州鉄道は病院やフルーツパーク、温泉などの施設を通る系統は小さいながら挿絵が描かれている。
これが印刷ではなくシール貼りになっているのは、手軽に挿絵コマを作りやすくするための工夫だ。挿絵を入れる、ということは印刷代も普通の文字よりはるかに高額になるため、気軽に企画製作しづらいのも確かなことだ。
京都市交通局は最近まで挿絵が全くなかったが、100円バス運行に伴って専用車両を設定した時に初めて挿絵入り方向幕になった。その後「よるバス」の挿絵、今では局名表示コマに市の市章の挿絵が入ったり、と挿絵が増えていった例もある。
最後に南海バスの挿絵は実にこだわりが深い。学校輸送のコマに学校の校章の挿絵が入っていたり、特定のコマでは南海バスの社紋の挿絵や市の章紋が描かれていたり、以前は海遊館シャトルにジンベエザメの挿絵が入っていたり、滝畑ダムにはダムの絵、サイクルセンターには自転車の絵、と挿絵コマの数では一番に多かったと思われる。LED車にはできないカラフルな絵が楽しめるのは方向幕のならではだと思う。