最近、外信でよく目にする「韓国で尿素水が足りない」というニュース。尿素水とはいったい何なのか、また日本ではどうなっているのかという点について現状を見ていきたい。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
【画像ギャラリー】韓国で尿素水が足りない?尿素SCRシステムとは(8枚)画像ギャラリー尿素SCRシステムでNOxを分解
尿素水が何に使われるのかというと、ざっくりとディーゼルエンジンから出る窒素酸化物を分解するためだ。よってガソリンエンジン車には不要なので、ハイブリッド車を含めてガソリン車が多い日本の乗用車にはほとんど無関係のものと言える。
その尿素水の原材料はアンモニアである。原理は比較的簡単で、アンモニアで窒素酸化物に含まれる一酸化窒素と二酸化窒素を無害な窒素と水に還元する。
ところがアンモニアは人体に有害なのでそのまま使用するのは非常に危険で取り扱いが厄介だ。
そこでアンモニアから人体に無害な尿素を作り出して、尿素水をタンクに積みこみ高温の排気中に噴射することによりアンモニアガスと二酸化炭素に分解させ、発生したアンモニアガスで前述の窒素酸化物を還元しようとするシステムが確立した。このシステムは一般的に尿素SCRといい、日本が開発した技術である。
その尿素水は高品位なものでなければならず、日本では石油プラントの近傍で作られていることが多い。理由は天然ガスや石炭、オフガス(石油を精製する過程で出る多くは燃やしてしまう副産物)を利用してアンモニアを製造するためである。
尿素水の原料はアンモニア
アンモニアは水素と窒素からできているので、石油系ガスの蒸気から水素を分離し空気中にいくらでもある窒素でアンモニアを合成する。そのアンモニアもほとんどは同じプラント内で尿素や硫酸アンモニウム等のさまざまな基礎原料に生まれ変わる。
アンモニアは窒素肥料としての利用がほとんどだが、最近では二酸化炭素を発生させない燃料としての実用化が研究される等、ますます重要な基礎原料になりつつある。
アンモニアから製造される尿素をもとにして作られる尿素水でディーゼルエンジンの窒素酸化物は劇的に低減される。一方、微粒子はフィルターで除去する。