バスに必須の尿素水が足りない!? 尿素SCRシステムとは

なぜ韓国で足りない?

 前述のようにアンモニアや尿素を作り出すことは技術的には難しくはない。石油プラントがあれば原材料のオフガスやオイルコークスは簡単に手に入る。食糧自給にも欠かせない重要な肥料原料としてのアンモニアを安定供給するために日本ではコストが高くても国内生産できるプラントがいくつかある。

 それでもアンモニアは若干の輸入をしているが、輸入量としては韓国の6分の1程度でしかない。

韓国の空港バスの例
韓国の空港バスの例

 韓国で尿素水が足りない理由は大きく2つある。1つ目は日本よりもはるかに巨大な石油プラントがあるのに尿素をほとんど自国生産していないからだ。これは技術がないからではなく単純に輸入した方が安いからである。しかもそのほとんどを中国に依存している。

韓国の路線バスの例
韓国の路線バスの例

 アンモニアは前述の通り原材料の石油や天然ガスの価格により製造コストが変わる。当然ながら石油の出る中東やシェールガスがある米国での製造コストは安い。中国は石油ではなく主に石炭からアンモニアを製造しているが、韓国は中国からの輸入に頼っている。

 その中国が豪州との軋轢で石炭輸入が難しくなたことで事実上の輸出規制をした。(実際には輸出検査強化だが事実上の輸出禁止)まわりまわって韓国で尿素が不足し尿素水の供給ができない状態に陥っている。

韓国では乗用車にもディーゼル車が普及している
韓国では乗用車にもディーゼル車が普及している

 もう一つの理由は乗用車にまでディーゼル車が普及していることだ。韓国ではトラックやバスだけではなく乗用車にもいわゆるクリーンディーゼル車が普及している。

 よって尿素SCRを使用するエンジンが日本よりも格段に多いことも混乱に拍車をかけているものと思われる。 乗用車が消費する尿素水はわずかだが、台数が多ければ無視できない。

バスに乗るときは重要な原材料が使われていることを念頭に!(三菱ふそうエアロスター・都営バス)
バスに乗るときは重要な原材料が使われていることを念頭に!(三菱ふそうエアロスター・都営バス)

 韓国の状況は置いておいても、日本は対岸の火事ではなく重要な基礎原材料の自国調達を進めることも安全保障のひとつだと言えるのではないだろうか。バスに乗車するときにに「尿素水注入口」を見かけたら重要な基礎原料だと頭の片隅に留めていただきたい。

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