バス事業者や運転士が「車内事故防止にご協力を!」と啓発ポスターや車内放送で盛んに言ってるが、乗用車運転の感覚だと交通事故は車内で起こるものと考え、軽視していないだろうか。バスの車内事故とはどのようにして起こるのか、この機会に知っていただきたい。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
(詳細写真は記事末尾の画像ギャラリーからご覧いただくか、写真付き記事はバスマガジンWEBまたはベストカーWEBでご覧ください)
■都営バスやバス協会がキャンペーン実施中!
直近では東京都交通局がバス協会と連携してキャンペーンを行っている。その内容は次の通りだ。「都営バスでは下記期間中、東京バス協会や他のバス事業者と連携して「車内事故防止キャンペーン」を実施いたします。
期間中は、より一層の安全運転を心掛け、ゆとり乗降の啓発及びゆとり運転の励行に努めますが、やむを得ず急ブレーキを掛ける場合があります。転倒など思わぬけがを防止するため、お降りの際は、バスが停留所に着いて完全に停車してから席をお立ちください。
また、お立ちになってご利用いただく場合には、つり革や手すりにおつかまりください。バスの車内事故防止に皆様のご理解とご協力をお願いいたします。」としている。
「やむを得ず急ブレーキ」というフレーズもよく聞く。乗用車でも事故防止(この場合の事故とは車外で起こる交通事故のこと)を回避するために急ブレーキを踏むことはある。その際に最も多く発生するのが車内事故だ。
車内事故にも多くのケースがあるが、最も多いのは転倒である。わかりやすく言えば、バス車内でコケる事である。コケなくても、手すりや握り棒に激突するケースも多い。
■バスのブレーキは乗用車とは根本的に違うことを知って!
バスのブレーキはエアブレーキと呼ばれる超強力なものである。車種によっては15トン以上にもなる車体を確実に止めるためには乗用車の油圧式ブレーキでは役に立たないのだ。圧縮空気を利用してシリンダーに送りピストンを押すことで制動力を得るのがエアブレーキだ。大型車がブレーキを緩解させるときに「プシュー」と聞こえるのは圧縮空気が抜ける音だ。
強力なブレーキのため、通常の減速や停車では油圧ブレーキよりも繊細な操作が必要で、運転士はブレーキペダルを「なめる」ように踏んでいる。停車時がもっとも危険なので、停車の寸前にブレーキを緩めて停車後に踏みなおすのは鉄道のブレーキ操作とあまり変わらない。
■危険な立席乗客
運転士が最も気にしているのは立席かつ高齢者の乗客だ。座席がないので立って乗るのは仕方がないとしても、立ち方によっては危険極まりないのだ。それは座席やそこら中に張り巡らされている握り棒やつり革のどれも握っていない場合だ。
これがなぜ危険なのかというと、仮に急ブレーキを踏んだ時に両手を離していても若い方であればすぐに手が出て近くの握り棒につかまり、あるいは体側を付けて転倒を回避できる。しkし、これが高齢者となると手が出ないか遅れて間に合わない。
■高齢者は急ブレーキに間に合わない!
結果、顔や頭でまともに受け止めてしまうか、足がぐらついて転倒する。顔が血まみれになるか足を骨折するかという車内事故が発生してしまう。
車内事故は車外で起こる事故と同様に交通事故として取り扱われるので、受傷者の保護を最優先に現場で警察官を呼び事故処理をしてもらうことになる。車外で起きた交通事故とまったく同じ扱いの人身事故になる。
コメント
コメントの使い方