路線バスの車内には、張り巡らされたように手すり(握り棒)が取り付けられている。とりわけ最近のバスの手すり類を見ると、オレンジに着色されているものが大多数を占める。一体なぜこの色なのか? もしや決まりでもあるのか!?
文・写真:中山修一
オレンジ=法律の色?
首都圏を筆頭に、路線バスがノンステップ車に置き換えられ始めて結構な年月が経つ。ノンステップ車の車内の手すりは十中八九オレンジ色と言ってよいほどであるが、実はこの色、2006年12月に施行されたバリアフリー法が関係している。
誰でも気軽に利用できる路線バスの性質上、多くの路線車がバリアフリー法の対象となる。この場合、同法で定められた車内設備の基準を満たすことが義務付けられている。
国土交通省が発行しているバリアフリー整備ガイドラインによると、径30mm程度、低床部分に高さ800mmくらいの位置に横向きの手すりを設置、通路を挟んで左右それぞれの座席1つおきに縦棒を取付など、手すり一つ取っても細かく決められている。
手すりの色にもちゃんと“お題”がある。まず床面や天井、シートモケットの色に手すりが溶け込んでしまうのはNG、かと言って目に刺さるほど彩度を上げるのも望ましくない。でもそれが手で掴む部分だとすぐ分かるような工夫が要求される。
そんな難しい条件を勘案すると、最も効果的なのがオレンジ色というわけだ。ちなみにガイドライン上ではオレンジ色ではなく、朱色や黄赤の表現を用いている。
さらに、最近の路線車のシートモケットの色が青系になっているのは、手すりのオレンジ色とコントラストを付ける意図が含まれている。
オレンジの棒を数えてみると
普段路線バスに乗っていても意識する機会は少ないと思うが、車内に縦の手すりは何本立っているのだろうか?
ガイドライン通りの仕様を持ったノンステップ車両を例にすると、全長10mクラスの大型バスでは少なくとも16本、9mクラスの中型バスなら12本以上取り付けられているはずだ。
車内後方のシート全てに手すりを取り付けているバス事業者もある。立席客のバランス保持だけでなく、席を立つ際に掴んで力をかけるガイドの役割も担っているので、手すりが多い分には接客設備の向上につながる。
それならガイドライン上でも、縦の手すりをシート1つおきではなく、全てに立てるよう定めたほうが有効なのでは?と思われるが、そうしないのには理由がある。
車内中央の低床部分のシートにまで全部手すりを立ててしまうと、車いすが置けなくなるためだ。
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