最初の発表は2023年末のことだった。トルコからやって来る小型のノンステ電気バスは、どうやらけっこうスゴイらしい、という評判のもと、バスマガジン本誌では徹底取材と試乗もさせていただいた。そしてこのたび、完全な日本仕様として仕上がったカルサンe-JESTのお披露目に立ち会うことができた。
(記事の内容は、2024年6月現在のものです)
執筆、写真/バスマガジン編集部
取材協力/アルテック
※2024年6月発売《バスマガジンvol.125》より
■まるで別のクルマのようにあちこち良くなってるぞ!?
トルコのメーカー・カルサン製の電気バス、e-JESTのレポートも今回で3回目となる。前回では一般路を徹底試乗させていただき、その動力性能の凄さを見せつけられた。ただしまだその段階では“仕様”の部分において日本向けとは言い切れないという状態だった(走行性能、ポテンシャルは同じだが)。
そして今回、e-JESTの輸入販売からメンテまでを行なうアルテックが、ユーザーたる事業者ほか利用者や有識者の声と、経験豊富な同社スタッフたちの研究・調査することによって、日本を走るための変更や追加の装備が施されたe-JESTがお目見えとなった。
登場したのはまっ白なボディの車両だ。必要とあれば、いますぐにでも街デビューできる状態に仕上げられたe-JESTが2台、用意されていた。
パッと見、前回で試乗した個体の差が見当たらない。同じ白いボディということもあるがラッピングはないので、若干印象が違うという程度。しかし現場で聞いてみると出るわ出るわ……。
まずは扉。従来はセンター分かれで左右に開くアウタースライド式だったが、片開きに変更された。開口部は同じ120cmだが、“開いてます感”が別次元!!
続いて安全対策パーツとしてリヤバンパーを追加。88kWのバッテリーや走行用の電装機器がリヤに収まるための対処だ。
そして充電方式が2系統用意された。従来のACコンセントから充電できるCCS2方式に加え、CHAdeMO(チャデモ)式を併設。電気バスで広く普及している方式のため、充電施設を利用する際にも便利なように、との配慮だ。
ここまででも十分な変更、いや“進化”といえるほどの発展ぶりだが、さらに起動用バッテリーが整備しやすいようにボディ後半のシート下に格納され、さらに同じリッド内には、これまで運転台にあったメインスイッチもレイアウトされている。
運転席のサイドウインドーの開口部が広くなり、曇り除去のための熱線デフォッガーを省略してエアコン風を当てる方式に。さらにミラーの視認性を高めるためにステー取り付け部をボディサイド面から前面に変更するなど、安全性能、快適性能、そしてドライバーの職場環境向上にも力が入れられた。
■乗務員やなにより乗客のことを考慮した進化は結構スゴイ
試乗した前回のe-JESTでは、パワー始動の際にカードキーが使用されていた。
これは珍しい仕様だったため、単純に喜んで(?)レポートしていたが、やはり営業運行となるとドライバーには仕事。慣れた方式の方が間違いない、という判断からキー式に改められた。内燃機車を含むほかのバスと共通の方式とすることで“違和感”を無くす効果を得られた。
さらに車内安全確認用のミラーも面積が大きくなり、運転席の右脇には音声案内装置の“送りボタン”や車内放送用のコントローラを配置、こちらもほかのバスと共通の感覚で操作できるようになっていた。
客席では、シートがガラッと変わっていた点が最大のポイントだ。これまでのいかにも輸入車らしいプラスチック的なシートから、クッション入りモケットに改められ、シートが並ぶ床の形状も乗客の足が安定しやすいように配慮された。
バリアフリースペースにある2脚の跳ね上げシートは、座面を下ろした際にロックされる構造を持ち、安定した座り心地のものとされた。握り棒の色もイエローからオレンジに、側窓はチルトダウン式からスライド式に、ソフトベルトの吊り革も装備され、乗客目線の仕上がりも万全となった。
なお、バリアフリースペースの車椅子固定方式も改められ、床に内蔵された固定ピンにリール式の固定ハーネスユニットをセットすることで、簡単な操作でガッチリと固定できるようになっていた。
またこのe-JESTの導入に際しては、補助金として環境省から1722万円、小売価格の40%相当が、さらに東京都ほか一部都県では同20%相当が上乗せされることになったので、導入のハードルはググっと低くなったといえる。
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