一世を風靡したボルボ・アステローペをはじめとして賑やかな車両陣容が特徴だった平成初期の庄内交通を振り返る

一世を風靡したボルボ・アステローペをはじめとして賑やかな車両陣容が特徴だった平成初期の庄内交通を振り返る

 山形県の日本海側、庄内地方にバス路線を展開する事業者である庄内交通。この事業者も平成期は分社化や再編を繰り返す変革期であった。

 その背景には人口減や利用者の著しい減少があるが、一方でボルボ製高速バスの本格投入や鶴岡市内線再編による利用拡大など、華やかな話題も目立つ。今回は分社化をはじめとした変革期に差し掛かる頃の庄内交通の車両たちを紹介しよう。

(記事の内容は、2025年3月現在のものです)
執筆・写真/石鎚 翼
※2025年3月発売《バスマガジンvol.128》『平成初期のバスを振り返る』より

■平成期は企業グループの変革とともにバスの陣容もダウンサイジングがすすめられた

ボルボ P-B10M 同社高速バスの一世を風靡したボルボ・アステローペで、車体は富士重工製。ミッドシップエンジンを採用し、後部1階はフリースペースのサロン室とされた。高速バスは「夕陽号」の統一ブランドとされた
ボルボ P-B10M 同社高速バスの一世を風靡したボルボ・アステローペで、車体は富士重工製。ミッドシップエンジンを採用し、後部1階はフリースペースのサロン室とされた。高速バスは「夕陽号」の統一ブランドとされた

 山形県庄内地方は、酒田・鶴岡の2大都市を中心に、南北に中小の都市が連なる。当然のことながら自動車の普及率も高く、昭和期から積極的にバスのダウンサイジングがすすめられた。

 平成初期には鶴岡や酒田などの都市圏においても、大型車は通学や観光路線に限られ、中型車が中心の陣容となった。車両はいすゞ・日産ディーゼル・三菱製が採用され、京阪バスからは多くの三菱製中古バスが導入されていた。

 この時代に分社化された子会社でも大型車の導入は限定的で、中小型の中古バスが多く採用された。大型一般路線車の自社導入は1990年までであったが、平成前期には昭和期に導入されたトップドア大型路線車もまだ活躍しており、観光路線などでその輸送力が活かされた。

 三菱製の大型車は多くが富士重工製ボディを採用していたのも特徴の一つで、純正ボディの大型路線車は中古車のみで見られた。

 特筆すべき車両はボルボ・アステローペで、庄内交通が販売代理店となったこともあって、高速・貸切バス用として多く導入された。

 特に同社の高速バスブランドである「夕陽号」は原則としてボルボ製車両で運転され、後部2階建て・1階部分サロンの特徴あるバスは、首都圏でも目立った。現在ではすべての路線で国産車両に置き換えられているが、同社の華やかな時代であった。

いすゞ P-LV214M 富士重工5B型車体を架装したエアサス・トップドア路線車で、空港連絡バスや長距離観光路線を主体に使用された。塗装は貸切バスと共通のものである
いすゞ P-LV214M 富士重工5B型車体を架装したエアサス・トップドア路線車で、空港連絡バスや長距離観光路線を主体に使用された。塗装は貸切バスと共通のものである

 車両のデザインは昭和末期から数種が採用され、平成初期には一般路線用に限っても、クリーム・赤を主体とした旧塗装車に加え、白地に赤とオレンジのストライプを配したもの、京阪バスからの中古車に採用されたピンク・気色の単色塗装にマスコットであるルル&ククをあしらったものが見られた。

 ほかに、高速バスや空港バスでは民芸品を配したデザインや、「夕陽号」用に、日本海に沈む夕日をデザインした塗装も登場した。さらに貸切では、黄色地に庄内地方の地図を記したものも登場した。

 分離子会社もそれぞれ独自の塗装を採用したため、塗装パターンだけでも枚挙に暇がない。分離子会社は、庄交観光バスのほか、あつみ交通、ひらた交通、遊佐交通、たちかわ交通が存在し、庄内交通の一般路線は一時期鶴岡・酒田地区に限られたが、これらは現在までに再合併されている。

 庄内交通は小粒な事業者かもしれないが、その取り組みなどバス事業の活性化に向けた挑戦も続けてきた。今はさらに厳しい状況とと思うが、雪も多い地域だけに地域を支える公共交通としてその使命を果たしてほしいと願う。

【画像ギャラリー】組織再編やボルボ製高速バス導入など激動の時代!! 変革の入り口にさしかかった庄内交通の平成初期(10枚)画像ギャラリー

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