フジエクスプレスで臨時運転士として乗務する記者のバス運転士日誌は、2年目になった記者が遭遇したそれはもう恐ろしい体験を披露する。べつに夏だからといって怪談話をしようというわけではないので、そこは安心していただきたい。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■脳が疲れている時間帯に限って…
記者が運転できる範囲は路線バス2路線と企業契約のシャトルバスだ。最近では何となく路線バス好きをアピールしているので、路線バス2路線を中心に仕業が組まれているような気がしている。その2路線とはこれまで多くの記事で取り上げた芝浦港南ルートと芝ルートである。
その日は朝ラッシュ時のシャトルバスを運行して、営業所に戻った後に芝ルートを運行するという複合仕業が組まれていた。この仕業に当たれば拘束時間は14時間におよぶ。しかし何度も書いたが、フジエクスプレスの乗合運転士に限ってはハンドル時間制ではなく拘束時間制なので。昼休みの1時間だけは無給だが、他にどれだけ待機や休憩があっても賃金が支払われる。
しかし14時間勤務はなかなか骨が折れる。休憩はあるので身体的に疲れるというよりも、営業運転には非常に気を遣うので、脳が疲れるような気がする。しかし、この日は脳が10倍くらい疲れる事案(あくまでも記者目線での話)が発生したのである。
■芝ルート新橋駅にて
芝ルートは田町駅近くの港区の施設であるみなとパーク芝浦を起点として、日比谷通りを中心線としてウネウネと路線が引いてあるルートで、新橋駅が終点である。運転士の交代はすべてみなとパーク芝浦で行われ、運転士の休憩所もこの付近にある。
一方の終点である新橋駅ではほとんどのダイヤで折り返し便として出発する。一部のダイヤは終点到着後に回送で入庫というのもあるが、概ね6分から20分弱の余裕を持たせて折り返しダイヤが設定されている。
定刻で新橋駅に到着できればダイヤ通りのインターバルが発生するので、その間にトイレを済ませたり一服したり、水分補給をしたりと、小休憩として利用できる。これができないと往復で約2時間が無休憩になりトイレに行けなくなるので困るが、最後の新橋駅までの数停留所間のダイヤに余裕があるので多少遅れていても新橋駅では定刻に到着できることが多い。
この日も、10分少々の折り返し時間を利用して港区の公共トイレと同喫煙所で缶コーヒーを飲みながら小休止して、いつも通りにバスに戻りドアを開けてバス停の既定の場所に付け直す。そのダイヤでの担当車両はEV車で、ディーゼル車ではエンジンを切って休憩するが、EV車は起動に時間がかかるため電源を入れたままで休憩する。別にアイドリングで排ガスが出るわけでもないので、それで構わないのである。
■普段は乗客は少ない
新橋駅から乗車する乗客はあまりいない。バス停の位置や路線が港区民以外にはあまり知られてないこともあるが、むしろ地図アプリでちぃばすが経路として出てくるので、外国人観光客が行先を確認して乗車するケースの方が多いくらいだ。そんな感じの始発停留所で所定の発車時刻を待ちながら乗車ドアを開けていると、突然「添乗監査」と書かれた紙を広げた人が乗り込んできた。
よく見るとフジエクスプレスの藤森常務取締役である。そんな紙を振りかざして監査といわれても、「聞いてねえよ!」である。もっとも告知されていたら色々と「対策」をされてしまうので監査にならないことくらいは記者も瞬時に理解はできた。しかし、だ。
なぜ山ほど運行しているバスの中で記者が運行する路線の便が選ばれたのか。狙い撃ちなのか、何かやらかしたからなのか、2年目の運転士は事故惹起(じゃっき・ネガティブな意味での事態を引き起こすこと)者が多いことは統計が示されているのでそのためなのか。いずれにせよ、これは後日明らかになる。




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