バスに限らず大型車の後ろに付くと、ただ遅いという理由だけではなく「赤信号の手前でトロトロ走るのでイラつく」という声尾を聞いた。バスや大型貨物車の言い分を聞いていただき、運転の参考にしていただきたい。減少し続けているバス運転士の本音もご理解いただきたい。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■前の信号が赤の時の運転操作
前の信号が赤なのは明らかな場合、見ていると普通乗用車のほとんどがアクセルを踏んだまま停止している車両の手前まで走って止まるケースが多い。そんなの当たり前じゃないかと思われるかもしれないが、大型車の多くは前の信号が赤だとトロトロ走る。
動機はいくつかあるのだが、理由としては「停止したくない」、つまり速度をゼロにしたくないからだ。AT車が多くなっている昨今では大した違いはないが、大型車は発進時と停止時に最も気を遣うし運転の操作量が多くなる。
どうせ止まらなくてはならないなら、トロトロ走って青になるまで時間を稼ぎたいのだ。理由としてはこれなのだが、それでは普通自動車の運転手からは「そんな身勝手な!」と思われるかもしれないので、なぜそうしたいのかを述べる。
■発進時に最も燃料を食う
これは普通車でも同じことだが、発進時に最も燃料を食う。2速で時速0kmから発進するのと、時速5㎞から再加速するのとでは雲泥の差が出る。また完全に停止している大型車を発進させて速度に乗せようとすると普通車よりもはるかに時間がかかる。そもそも加速がトロいのだ。
そこでどうせ止まるのであれば、なるべく信号が青になるまで粘って「発進」ではなく「加速」で信号を通過したいのだ。そうすることで発進時のトロさをいくらかはカバーできるし、渋滞回避にもつながる。
■ブレーキはなるべく踏みたくない
これは特に旅客を輸送するバスに言えることだが、バスの車内事故は停止時と発進時に多く起こる。それだけ制動力は強いし、発進時にかかる「G」も大きいのだ。よってバス停で停車する場合を除いてはなるべくなら止まりたくないし、発進という操作をしたくないのが本音だ。
よって前の信号が赤になるとまずはアクセルオフで惰性で走り、止まりそうな距離であれば排気ブレーキを入れて減速させる。なるべくブレーキを踏まずに信号をやり越した方が停止時および発進時のショックを回避でき、車内事故のリスクを減らせるのだ。
■車間空いてるけど入らないで
このような理由から大型車は前の信号が赤だと惰性で走るので、車間距離が空いていることが多い。その車間を狙い、これ見よがしに入ってくるのがタクシーだ。1秒でも1mでも前に出たい気持ちはわかるが、それで目的地に到着できる時間は1分も縮まらない。
普通自動車もそうだが、前述した理由で「再加速」するために蛇行で運転しているのだから、前方の信号が赤の時に大型車の前が空いているからと言って強引に割り込むのはご遠慮いただきたいのが大型車の本音だ。
■邪魔に思うかもしれないけど…
バスもトラックも街中ではトロいのは事実だし、邪魔に思う気持ちも分からなくはないが、バスがないと通勤通学や通院、買い物の足が奪われるし、トラックがないと昨今急増している通販の配送や宅配便の翌日配達は望めない。考えてみれば我々が生活するうえで欠かせない重要インフラなのだ。
無駄な加速をして車線変更してまで大型車の前に割り込んでみても、到着は1分も変わらないし、加速するのに余分な燃料を消費し、無駄な車線変更でタイヤも摩耗していることを考慮すると決して得とは言えない運転だろう。何よりも、事故の可能性が高くなるだけでいいことは一つもない。
特に路線バスがバス停から出るためにウインカーを出した時は法律上はバスの発進を妨害してはいけないことになっている。これは乗合自動車発進妨害違反で普通車の場合、反則金6000円と違反点数1点が加算される。
検挙されるかどうかは別の問題としても、バスの発進には大変気を遣う行為なので温かく見守って、安全を確認した後に広い道路の場合は右車線から抜いていただきたい。バス運転士不足が叫ばれる今だからこそ、バス運転士の気持ちを少しでも理解していただければ幸いである。
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