ソフトバンクグループの孫正義氏が、中国のBYDと提携して5月から日本向けに毎月3億枚のマスクを供給すると発表したことで、大きくクローズアップされたBYD。
そんなBYDはもともと携帯電話向けのバッテリー製造から始まって、電気自動車を生産するメーカーとなった。
さらに2020年4月2日にはBYDとトヨタが、電気自動車の研究開発合弁会社「BYD TOYOTA EV TECHNOLOGYカンパニー有限会社」の発足を発表しているが、なんと電気バスまで製造しているという。
全国各所のバス事業者からは、ここ4〜5年ほどの間に「電気バス導入」のニュースが活発に飛び込んで来る。いうまでもなく、キーワードは「エコ」そして「ゼロエミッション」の実現だ。
どんな交通事業者でも、これを実現したいという意思を強くもっているものの、特に大手では様々な事情で大きくは踏み切れずにいた。そんな中、富士急バスが3月6日より3台のBYD製電気バスを走らせることを発表した。
文/写真:バスマガジン編集部
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■国内に導入されているBYD製電気バスK9
いま、日本において大型の電気バス導入といえば、BYDというメーカーが名前を上げ、目立っている。すでにご存知の方も多いと思われるが、中国のメーカーだ。
電気バスといえば、いま勢いがあるのはアジア勢。中でも一挙に都市交通のインフラを、電気バスに変えてしまった中国のパワーす凄まじい。バス業界でもトップの注目度だ。
まずこのBYDというメーカーは、もともとバス製造会社ではなく、携帯電話とかリチウムイオン電池などのIT関連製品と、プラグインハイブリッド指揮の乗用車メーカーだった。現地名は「比亜迪」と記す。
最近のニュースでは、日本の携帯電話会社のソフトバンクが提携が報じられている。新型コロナウィルスの拡大防止のために不足しているマスクの製造にも乗り出しているというのだ。
それも毎月3億枚という生産量というから、まさに「中国企業恐るべし!!」 だ。
という様々な事業展開をしているBYDだが、やはり電池技術から始まるEVの話が関心の中心となるだろう。トヨタとも提携して、電気自動車の研究開発合弁会社「BYD TOYOTA EV TECHNOLOGYカンパニー有限会社」を発足させたほどだ。
この電池の高性能技術が今回の大きなポイントだが、電気バスでいうとやはり長い航続距離の維持がこれまでの最大のネックだった。乗用車ではテスラなども結構な後続距離を実現しているが、バスと乗用車ではスケール感がまったく違う。
路線バスで車両総重量(GVW)12〜14t、電気バスの場合は16tの場合もあり、それをゴー&ストップというチマチマした運行形態で走らせようというのだから、元のエネルギーも膨大に必要とされるのだ。
都市部では1日150kmほどの走行距離が必要で、さらに冷暖房、方向幕やアナウンスなどの案内装置、料金箱などすべて電気でまかなっている
■250kmの航続距離を実現した電気バス
このたび富士急バスに導入されたこのBYD電気バス「K9」のスペックは、なんとフル充電時で250kmという航続距離を誇る。
バスマガジン編集部としては、平地の多い都市部より、山坂道という言葉通りに山道やワインディング、さらに狭隘路も多い山梨県の富士急バスという事業者が認めた性能であることがトピックだ。
もちろんほかにもそういった条件の土地はいくらでもあるだろうが、富士急バスが本格導入したということは、今後の業界への影響も大きいと思われる。
話によると富士山の五合目まで行って戻れる以上の航続性能はラクにあり、実際に富士山シャトルとしての運用も予定されているという。
富士山を登るとなれば、バッテリーの消費量は相当に大きなものとなってしまうはずだが、こういった性能アピールこそ、富士急バスならではのものだ。
そしてこのバス、写真を見て気付いた方もいるだろうが、ホイールベースの長さが6100㎜もある。というのも全長は高速・観光バス並みのフルサイズ12mというスケールなのだ。
もちろんノンステ&バリアフリーの性能を持つ路線車だ。
ボディは富士急バスならではの富士山をイメージしたペイントで、同社の路線車伝統のグリーンでデザイン配色が成されている。
そして気になるのはまず側窓。ノンステ部分は天地も大きなはめ込み式だが、ステップアップのある床部に該当する部分は天地が細めの小さな窓だ。
乗車するとわかるが、着座時に乗客の胸のやや下くらいからという高さ位置になるので、眺望的には問題のない仕様だった。後部にはバッテリーが積載されるため、リアウインドーはナシだ。
今回のこの電気バスの導入は、国土交通省「平成31年度交通グリーン化事業」に認定されている。
それにより低公害車普及促進対策費補助金が交付されており、災害時などには電気バスを移動蓄電池として機能させ、スマホの充電や照明電源、休憩所としての開放といった対策基地としての役割も持つ。
実際の走行はとてもパワフルで発進&加速のレスポンスも良く、静かで快適な乗り心地だった。
バスにおける内燃機関の振動や匂い、音をアクセサリーのように好んでいるバス好きには物足りない(?)かも知れないが、これから未来へ繋がる技術、そしてバスの可能性も認識しておきたい。