小泉政権時代、規制緩和で道路運送法が改正されて10年以上が経った。バス事業の新規参入が容易になり、古くから運行するバス会社が独占状態だった路線に風穴を開けたが、日本の景気低迷や少子化などから、バス利用者が増えていなという現実も見える。空港バスもその渦中にある。
執筆/写真:谷川一巳(バスマガジンvol.80より)
当初からの共同運行は運賃調整しているため競合にならない
では、同じ空港に複数のバス会社が運行していれば運賃が安めに推移するかというと、そう簡単ではない。
鹿児島市内~鹿児島空港間は古くから南国交通といわさきバスネットワーク(以前の鹿児島空港リムジン)の2社が運行しているが、この間の運賃は1250円と安くない。
広島市内~広島空港間に至っては、広島電鉄、芸陽バス、広島交通、広島バス、中国JRバスの5社もが運行しているのに運賃は1340円である。
長崎と鹿児島や広島ではどこが異なるかというと、長崎では、それまで1社の独占状態にあった空港バスに、新規のバス会社が参入して競合になったのに対し、鹿児島、広島の例は、当初から複数のバス会社が共同運行になっている点である。
複数社の運行といっても、当初から複数社が申し合わせて車両や運賃などを調整しており、競争の原理は働かない。
とくに広島の場合は地域のバス会社すべてが参加しており、新規参入会社が現れる可能性がほとんどなく、そういった意味では独占度が高い路線である。
妥当な運賃は1000円以下!? 交通費のバランスも考えたい
鹿児島、広島は空港が市内中心地から遠いというのもバス代が高くつく大きな理由であることは百も承知である。
「東京シャトル」のように、20分間隔で走らせても乗車率が高くなるような大空港でもない限り、所要時間1時間で1000円以内は難しいのかもしれない。地方のバス会社にしてみれば空港バスはドル箱路線で、その収益で赤字のローカル路線が保たれているという現状もある。
主要空港でアクセス交通費が1000円を超すのは、新千歳、小松、広島、大分、鹿児島などである。新千歳はバスと競合するJRも1000円を超えているので、安くならず、小松空港は、そもそも石川県のバスはほとんどが北陸鉄道系列なので、競争相手が現れる可能性がない。
大分空港は大分市内から遠く、大分市内へは大分交通、杵築、佐伯へは大分バス、由布院へは亀の井バスと棲み分けされているので、運賃が安くならない。 しかし、航空運賃が安くなって、航空機利用者が増加している現在、主要空港~市内間は1000円以内が妥当かなと思う。
バス会社に言わせると、おそらく経費として車両のメンテナンス費、人件費、高速道路代、駐車料金などと計算していくと、現在の運賃が妥当ということになるのだと思うが、問題は交通費のバランスなのである。
交通費全体が低廉になれば、人物の往来が多くなり、ひいては地域の活性化につながるという考えも持たねばならないであろう。