昭和を舞台にした映画などを見ていると、バスの車内にはドライバーのほかに乗組員が描かれているのがほとんど。ご存じの通りそれは車掌さんなのだが、一体どんな役割を果たしていたのか?
そしてなぜ現在のバスはワンマンが当たり前になったのか?
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
童謡にも法律にも…
「運転手はキミだ車掌はボクだ…」という童謡を子供のころに歌った覚えのある方は昭和生まれだろう。遠足のバスでよく歌ったものだが、この童謡は文部省唱歌で昭和7年の新訂尋常小学唱歌に収録されていた「電車ごっこ」なので、本当はバスの歌ではない。
歌詞は都電をうたっていて2番の歌い出しは「運転手は上手電車は早い…」である。しかし昔は実際に路線バスに車掌は乗務していた。
現在の法令も基本的には車掌を乗務させないといけないことになっていて、ワンマンが例外扱いになっている。さまざまな機器が機械化、電子化されワンマンバスが当たり前になった。その理由は「合理化」つまり人件費の削減にほかならない。まずは現在も生きている法令からひも解いてみる。
基本は車掌乗務でワンマンが例外?
昭和31年運輸省令第44号「旅客自動車運送事業運輸規則」の第15条には(車掌の乗務)として、「一般乗合旅客自動車運送事業者、一般貸切旅客自動車運送事業者及び特定旅客自動車運送事業者は、次の各号のいずれかに該当する場合には、事業用自動車(乗車定員11人以上のものに限る。)に車掌を乗務させなければ、これを旅客の運送の用に供してはならない。ただし、天災その他やむを得ない理由のある場合はこの限りでない。」と規定されている。
各号の第1を抜粋すると「車掌を乗務させないで運行することを目的とした旅客自動車運送事業用自動車(被けん引自動車を除く。)であつて道路運送車両の保安基準(昭和26年運輸省令第67号)第50条の告示で定める基準に適合していないものを旅客の運送の用に供するとき。」とあり、要するに「ワンマンバスとして基準に適合していないバスで運行する時は車掌を乗せなさい」という意味だ。