「訪日外国人を増やし観光立国を目指す」。この2003年に始まったビジット・ジャパン・キャンペーンは、日本の魅力的な旅行商品を造成し、インバウンド需要を掘り起こし訪日旅行事業を官民一体で推進する取り組みである。
それにいち早く対応したのが東京都文京区後楽に本社を構える日の丸自動車興業だ。2004年、日の丸自動車興業はドイツ製、ネオプラン・スカイライナーの2階建てオープントップバスを日本で初導入。
所要時間約50分の車窓観光の短時間ドライブコースとして、募集型企画旅行商品の形で運行を開始した。いままでにない新しい旅の形を誕生させたのである。
コロナウイルスの影響が落ち着いたらぜひ、東京の摩天楼をオープントップバスから眺めませんか?
文・写真/諸井泉
取材協力/日の丸自動車興業
■乗り物としてのバスを超えた楽しさがある!!
スカイバスチケットカウンターは日本一のビジネス街・丸の内オフィス街の一角、三菱ビルの1階にある。東京駅丸の内南口から徒歩1分という交通至便の三菱ビル前にスカイバスが配車されると、どこからともなく人々が集まってくる。
真っ赤なボティにSKYと大きく描かれたロゴマークは遠くからでもよく目立つ。バスの車両自体が広告塔となっているのだ。ここ丸の内からは、ドライブ周遊コースであるスカイバス東京のほか、同型車両でSKY HOP BUS(1日券で乗り降り自由の観光バス)も運行する。
SKY HOP BUSの名称は「Hop On Hop Off(気軽に乗降するという意味) 」からきており、海外の主要都市の観光の足としてはポピュラーである。そのため、欧米を中心に外国人の乗車がほとんどで、車内の様子は外国のようなムードだ。
三菱ビル1階にあるスカイバスチケットカウンターで接客対応していたスタッフの中に、石田裕奈さん(以下石田さん)がいた。石田さんは入社4年目の中堅のアテンダント(案内業務係)である。
スカイバスが配車されると石田さんはカウンターから飛び出して、乗務予定の車両へと向かう。早速、座席や窓を拭いたり、マイクのテストをしたりと大急ぎで出発前の準備にとりかかる。準備を終えると、もう乗客を案内する時刻である。
この日、石田さんが担当するのはスカイバス東京の人気コース「東京タワー・レインボーブリッジコース」である。バスが走り始めるとさわやかな風が座席を包み込む。赤レンガの東京駅舎を右手に眺めながら行幸通りに入ると、すぐ目の前に皇居が広がり、いきなり観光スポットだ。
屋根のない2階建てバスは開放感抜群で、座席が高い分、皇居の奥まで見渡せる。高いアイポイントからのストリートビューは日常で見慣れている景色をも変えてしまう。すべての座席が特等席なのだ。車内には街路樹の小枝や葉っぱが飛びこんでくることもあり、体感型ツアーの始まりである。
アテンダントとスカイバスは共通のコンセプトを持って活動中
バスは日比谷通りから東京タワーへと向かうが、ルート上には老舗ホテルや虎ノ門ヒルズ、東京タワーなど見どころが目白押しだ。
バスの速度や、遮るものないバスの座席から建物を見上げる乗客の眼線を意識し、車両の特徴が生み出す非日常体験の瞬間を石田さんは様々な説明と共に、さながら演出する役割を担う。
そうしているうちにバスは首都高速道路へと入り、速度も上がり迫力あるドライビングコースとなる。レインボーブリッジを渡る際は海からの強い風が吹き付け車内から歓声が上がる。
バスはジェットコースターのようなアトラクションの乗り物へと変化する。2階建てオープントップバス導入に際し、同社が掲げたキャッチフレーズは「カジュアル!エンジョイ!サプライズ!」。そのサプライズが全開した瞬間だ。
それはまさにバス業界の「女子力がなせる業」だった。石田さんをはじめ、バス業界においても女性の活躍の場が、今後も大いに広がっていくことだろう。
コメント
コメントの使い方