「行きはよいよい……」なんて昔の人はよく言ったものだけれど、旅の帰り道になんとも怖い目に遭ってしまった、そんな日の公共交通機関にまつわる話。
文・写真:中山修一
(バスマガジンWeb/ベストカーWebギャラリー内に、とっても怖い帰り道で撮った写真があります)
■竜飛岬の帰り道
2025年夏の少し前。青森県の竜飛岬にバスを使って訪問して、なかなか来られない場所だからと、岬で一泊していこうと考えた。
宿の予約はすぐ取れて、行きのアクセスは北海道新幹線の奥津軽いまべつ駅で下車、そこから町営バスを乗り継いで竜飛岬へ行くルートに決めた。
問題は泊まった翌日の帰り道。当日は夕方に人と会う約束があり、それに間に合わせるには、奥津軽いまべつ駅を10:22に発車する東京行き「はやぶさ16号」をつかまえる必要があった。
■「ません」の応酬
せっかく温泉宿に泊まるのなら、時間ギリギリまで滞在していたいと考えたくなるもの。それを実現するには、JR津軽線の代行輸送を兼ねた、乗合タクシーの「わんタク」が最有力。これに乗れば竜飛岬〜奥津軽いまべつ駅を直通してくれる。
「わんタク」には定時便と、ある程度自由に時間設定のできるフリー便があり、定時便を使うと間に合わないため、フリー便の手配をすることにした。
「わんタク」は同エリアで広くアピールされていて、宿泊先でも推奨のアクセス手段に選ばれているほど。それなら間違いないだろう、と前日に予約の電話を入れた。すると……
「配車できません」
……え? あれほどポスターとか貼りまくって宣伝してるのに配車できないって?? 聞けばこの「わんタク」、低料金で利用できるため需要が供給を上回っている状態で、当日に空車が一台もないのだとか。
まさか月曜の朝9時台で配車を断られるとは想像すらしなかった。一応念のため泊まる宿に連絡。送迎の類を行っているかどうかを聞いてみたところ
「一切やってません」
とのお返事。
では普通のタクシーを呼べるかと聞くと、周辺のタクシー会社が「わんタク」を担当しているため、わんタクが配車不可となれば普通のタクシーもまず呼べない、という見解だった。ただでさえ交通の細い場所でこのシナリオは脅威だねぇ。
これで龍飛埼灯台を8:45に出る外ヶ浜町営バスで三厩駅へ行き、今別町巡回バスに乗り換えて奥津軽いまべつ駅に抜けるしか選択肢がなくなった。
最初から町営バス案を選ばなかったのは、三厩駅での乗り換え猶予が3分しかなく、それぞれバスの運行事業者(町)が異なるため、遅れが出ると厄介だな、のような不安を招くせいもあった。
■ムード下り坂な帰路
帰りの日の天候は曇り時々小雨。前日の配車を断られたダメージを地味に引きずりつつも、天気までムードダウン役を買って出てくれるとは有難いことで。
外ヶ浜町営バスは時刻通りに竜飛岬を出発。来た時の町営バスの運転手さんは物凄くフレンドリーな方で、天気も晴れていて実に爽やかなバス旅ができた。
一方帰りの運転手さんはといえば、50年漬け込んだ梅干しすら震え上がるしょっぱさ。順番が逆ならまだ良かったんだけど、思うようには行かないねぇ気分どんどん沈んじゃうよこれ。
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