日本一静かな(?)新幹線の駅「奥津軽いまべつ駅」……ここからバスに乗ったらどこへ行けるんだ?

日本一静かな(?)新幹線の駅「奥津軽いまべつ駅」……ここからバスに乗ったらどこへ行けるんだ?

 1日あたりの利用者の数を基準にするなら、日本一賑やかな新幹線の駅は31万人/日を超える東京駅になるようだ。ではその反対に日本一“静かな”新幹線の駅といえば……ココなんですよ。
文・写真:中山修一
(バスマガジンWeb/ベストカーWebギャラリー内に、奥津軽いまべつ駅とその周辺交通にまつわる現地撮影写真があります)

■本州最北端の新幹線駅

元々は津軽今別という在来線の駅があった場所に「奥津軽いまべつ駅」が作られた
元々は津軽今別という在来線の駅があった場所に「奥津軽いまべつ駅」が作られた

 利用者数(乗降客数)を基準にした、日本一静かな新幹線の駅はどれか。入手可能な数値情報を見る限り、恐らく北海道新幹線の「奥津軽いまべつ駅」だろう。

 奥津軽いまべつ駅は2016年に開業した、青函トンネル青森側に位置する本州最北端の新幹線駅で、2022年度の国土数値情報を参考にした場合、1日あたりの乗降客数は何と40人である。

降りること自体が目的にもなる(!?)楽しい新幹線駅の一つ
降りること自体が目的にもなる(!?)楽しい新幹線駅の一つ

 同駅には上り/下りそれぞれ「はやて」が2本ずつ、「はやぶさ」が5本ずつの、1日合わせて14本の列車が停車する。

 単純に乗降客数を列車の数で割ると、1列車が到着するたびに奥津軽いまべつ駅を往来するお客さんは3人いるかいないか、ということになる。

立派な作りの階段塔と連絡通路が駅構内と地上を繋いでいる
立派な作りの階段塔と連絡通路が駅構内と地上を繋いでいる

 奥津軽いまべつ駅ほど、ひっそり穏やかな空気感に包まれた新幹線駅というのも、全国的には物凄く珍しい存在。

 降りてみると、大動脈たる新幹線のハイテク感満載な設備の外見からは連想し難い、山奥の湖畔に佇んだ時のような静けさが都会の喧騒を忘れさせ、なかなかどうして新幹線で旅に出て良かったと思わせる、癒しの効果を十分に演出してくれる。

■ここで降りたらどこへ行ける?

 奥津軽いまべつ駅の出入口は1カ所のみ。改札を出たら連絡通路を渡り、116段ある階段塔を降りて地上に出るユニークな構造だ。階段塔にはエレベーターが付いているのでアクセスは楽。

階段塔を自分の足で上り下りするのもまたエンタメ
階段塔を自分の足で上り下りするのもまたエンタメ

 さて、この駅に旅行目的で降りたとして、一体どのあたりへ行けるだろうか。とにかく駅から先へ進むための足を確保する必要があるが、その前に1カ所。

 奥津軽いまべつ駅の隣には、JR津軽線(2025年現在バス代行中→代行のまま2027年鉄道廃止)の津軽二股駅があり、さらに道の駅が併設されている。

奥津軽いまべつ駅/JR津軽線の津軽二股駅/道の駅はお隣さんの関係
奥津軽いまべつ駅/JR津軽線の津軽二股駅/道の駅はお隣さんの関係

 津軽二股/道の駅ともに歩いてすぐの距離なので、ひとまず立ち寄って周辺情報の収集や休憩、何か買っていくのも楽しい。

■タイヤの付いた乗り物事情

 奥津軽いまべつ駅から徒歩圏内で周辺観光を完結させるのは少々難しいかも。そのため、奥津軽いまべつ駅拠点の津軽半島をより深く楽しむなら、タイヤの付いた乗り物はほぼ不可欠だ。

手前の線路は津軽線。2022年から不通が続いてレールがすっかり赤くサビているものの、書類の上では2027年まで現役を通すハズ
手前の線路は津軽線。2022年から不通が続いてレールがすっかり赤くサビているものの、書類の上では2027年まで現役を通すハズ

 最も簡単なのはレンタカーの類であるが、奥津軽いまべつ駅にあるかと言えば、5人乗りフィット系のカーシェアが1台割り当てられている(2025年6月現在)。

 ほか、駅前にはロータリーが作られ、タクシー乗り場のレーンも用意されている。ただし常駐しているタクシーはあまりいないようだ。

■あの有名観光地へ行く貴重な足掛かりが!

 続いては電車旅で特に役立つ乗り物・バスの類を見てみよう。タクシー乗り場と同じロータリー内にはバスのレーンもある。

駅を出てすぐの所にバス乗り場が置かれている
駅を出てすぐの所にバス乗り場が置かれている

 どんなバスが来て、どこへ向かうのか。まずは前述のJR津軽線の代行バスが奥津軽いまべつ駅前を通る。

 代行バスはJR津軽線の蟹田駅〜三厩駅を結ぶもので、奥津軽いまべつは途中の停車ポイント。車両は30〜40人乗りクラスの中型ミドルデッカー汎用車が使われている。

JR津軽線の代行バス
JR津軽線の代行バス

 また、代行バスとほぼ同じルートを通り、三厩より先の有名観光地・竜飛岬まで足を伸ばす、予約制の乗合タクシー「わんタク」も奥津軽いまべつ駅に立ち寄る。

 同乗り場は、奥津軽いまべつ駅が建っている今別町が運営する巡回バスの発着場所でもある。銀色のボディに緑字で「IMABETSU」と後部に書かれた、トヨタ・ハイエースコミューターGLが巡回バスの目印。

各方面への今別町巡回バスが駅前に並ぶ
各方面への今別町巡回バスが駅前に並ぶ

 巡回バスは母沢(もさわ)、三厩(みんまや)、平舘(たいらだて)の3方向に路線が伸びていて、基本的には地元住民の利便性を考慮した経路設定になっている。運賃は1回200円均一。

 この中で、奥津軽いまべつ駅前〜三厩駅前を結ぶ「A3・C1」系統は、三厩でバスを乗り換えれば、竜飛岬までリーズナブルな公共交通機関で完結して行けるため、旅行での足にも使えて便利だ。

代行バス以外での、三厩〜竜飛岬方面への貴重な足
代行バス以外での、三厩〜竜飛岬方面への貴重な足

 「A3・C1」系統は1日5本の設定で、ローカルな装いであるのは確かながらも、それほど無理のない時間帯にバスを狙えて、奥津軽いまべつ駅で新幹線への接続もできる。

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