昔からある鉄道路線が長期間不通となり、バスなどで振替輸送を行うケースが近年よく見られるが、2025年現在その真っ只中にいるのが、青森県を走るJR津軽線だ。
文・写真:中山修一
(バスマガジンWeb/ベストカーWebギャラリー内に、JR津軽線振替輸送の現地撮影写真があります)
■本州の果てのローカル線
津軽線は、青森県の青森駅を出発して津軽半島を北上、55.8km先の三厩(みんまや)までを結ぶ、JR東日本が運営する鉄道路線の一つだ。
同路線の一部区間は青函トンネルへと繋がる、JR北海道の海峡線への接続ルートであり、2016年の北海道新幹線開業後は、旅客列車こそ大幅に種類と数を減らしたものの、貨物列車の通り道としては今も健在で、物流を支える重要な役割を担っている。
そんな津軽線には二つの顔があり、青森から27km地点にある蟹田駅を過ぎると、鉄道の大動脈的な一面が鳴りを潜め出し、ディーゼルカーがのんびり走る、いかにもなローカル線の様相へと移り変わる。
終点の三厩駅は、その先に線路の続かない終端駅で、1970年代にヒットした演歌で知られる、約14km離れた竜飛岬への、公共交通機関で普通にアクセスする際の最寄駅でもある。
周辺の雰囲気から、なんとも旅情に満ちた最果て感を楽しめるのが三厩駅の魅力。ただし本州最北端の駅というわけではなく、本州にある鉄道の駅を北から順に並べて5番目くらいだ。
■自然の力には勝てないけれど……
2010年代以降、自然災害がもとで鉄道線が不通になるケースが目立ち始め、日々運転を続けていた津軽線も、2022年にこの一例に取り込まれてしまう憂き目にあった。
同年8月3日に大雨が降り、その影響で蟹田駅より先の一部区間の線路が損傷を受け、蟹田〜三厩間が不通となった。この時は10日程度で復旧する見込みであった。
ところが1週間後に再び大雨が降り、線路や設備の損傷が13カ所に増加。復旧の見込みが立たなくなり、以降そのまま不通が続いている。
結局のところ、2021年度のデータで営業係数8,582を記録した津軽線の末端区間を、鉄道で復旧させるのは決して現実的ではなかったようだ。
その後2025年6月にJRの意向と周辺自治体との合意が取れ、2027年4月に津軽線の蟹田〜三厩間の廃止が決まった。
なお、蟹田から少し先の、海峡線へと繋がる津軽線の区間は貨物列車が通るため、その部分のインフラは継続して残り、定期の旅客列車が走らなくなる。
■列車の代わりを務める乗り物
鉄道の不通区間には大抵、代わりの移動手段が用意される。津軽線の場合、JR各社でよく見られる対応策である「列車代行バス」が毎日運行している。
2022年8月の被災直後しばらくの間は振替輸送がなかったものの、同月22日から代行バスの運転が始まった。
2025年6月現在、津軽線代行バスは現状の電車の終点である蟹田駅〜三厩駅の間を結んでいる。蟹田→三厩方面の下りが平日5本・土日祝3本。三厩→蟹田方面の上りが曜日共通で3本のダイヤ設定だ。
代行バスのほか、末端区間が被災する少し前に実証実験を始めていた、乗合タクシーの「わんタク定時便」が4往復あり、津軽線代行バスと合わせて活用されている。わんタク利用時は予約推奨。
代行バスは朝と昼過ぎ〜夕方の通勤通学時間帯、それ以外の午前中〜昼間にかけて「わんタク定時便」が割り振られている。
代行バス/わんタクとで運転区間が異なり、代行バスが蟹田〜三厩駅に対して、わんタクは蟹田〜三厩〜龍飛埼灯台(竜飛岬)まで行ける。
また蟹田〜三厩間の代行バスは、法律上は一般路線バスではなく、観光バスと同じ「貸切バス」の一種に含まれる。
今後、路線バスの営業免許を取得する予定とのことだが、2025年6月時点では、法的な制約により車内での運賃収受ができないため、事前にJR線の乗車券を用意しておく必要がある。
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