■駅前をくまなくカバー
ここでは代行バスに絞って話を進めていこう。津軽線代行バスは地元の一般貸切バス事業者である、中里交通がJRの委託を受けて運行している。
あくまで鉄道の振替輸送ということで、下りの第3便を除き、蟹田駅での津軽線への接続が取られていて、本数は少ないものの利用自体はそう難しくない。
代行バスで使われている車両に注目すると、貸切バスや送迎バス向けによく選ばれる、全長9mクラスでドア1カ所・ミドルデッカータイプの中型汎用車が基本とみられ、現地訪問時の車種はいすゞガーラミオだった。
津軽線の蟹田〜三厩間には両端合わせて8つの駅があり、代行バスに乗ってみると各駅の前をくまなくカバーしている様子が見て取れ、鉄道の振替輸送らしさがハッキリと感じられて楽しい。
また、途中の停車ポイントである「津軽二股」駅には、すぐ隣に北海道新幹線の「奥津軽いまべつ」駅が建っている。
バスの路線図や時刻表にも「津軽二股駅(奥津軽いまべつ駅)」と書かれていて、読めば津軽線の代行バスが新幹線の駅を経由すると大体イメージできる。
以前は津軽二股駅の前にバスが停車していたようだが、2025年6月現在は奥津軽いまべつ駅への出入口のそばに停車する。
それでも路線図や時刻表での奥津軽いまべつが()カッコ扱いなのは、奥津軽いまべつ駅の所有者が津軽線を管理しているJR東日本ではなく、JR北海道であるところに関係していそうだ。ちなみに代行バスを使った北海道新幹線への乗り継ぎもできなくはない。
■代行バスならではの貴重な体験
津軽線代行バスに乗車して、蟹田〜津軽二股までの所要時間が30分、終点の三厩まではダイヤ通りなら59分だ。
前述の通り、津軽線の末端区間は2027年4月1日に廃止が予定されており、これと同時に現在の津軽線代行バスも役目を果たして姿を消すのは確実だ。
その後どうなるのか……関係自治体の広報誌に目を通すと、現状の代行バスに加え「わんタク」ほか周辺を走る公共交通を一体化させて、新しい交通形態を整備していく計画とのこと。
現状の代行バスも実質的には既に「代替バス」と言える性質を持ってしまっているが、完全な代替バスへと姿が変わるのは、恐らく廃線と同じタイミングだ。
さらに、2027年4月から少なくとも向こう18年間は、計画している交通機関の運営を続けていくそうだ。
現時点で既に列車が走らなくなって久しい津軽線の末端区間であるが、計画通りに進んだ場合、書類の上では2027年3月末まで“現役”の鉄道ということになる。
廃線まで残り2年を切った昨今、電車の切符で乗る珍しいステータスを持った「代行バス」を足代わりに、現役路線としての余生をひっそりと送る、津軽線最後の姿を見つめる貴重な体験ができるのもあと僅かだ。
【画像ギャラリー】代替交通への中継ぎ役〜JR津軽線代行バス〜(15枚)画像ギャラリー
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