新横浜や新神戸といった「新」のつく新幹線駅と、横浜や神戸など元になった地名の在来線駅。同じ地名が付いているのだから、背中合わせのような感覚で行き来ができ、双方を結ぶ公共交通も余るほど用意されている……のようなイメージはあまりなく、むしろ必要最低限の選択肢しかない気がする。実際のところどうなっているだろう?
文・写真:中山修一
(バスマガジンWebギャラリー内に、山口駅〜新山口駅の公共交通アクセス事情の現地撮影写真があります)
■山口駅と新山口駅
今回注目するのは、JRの在来線・山口線の主要駅の一つである山口駅と、JR山陽本線・山口線・宇部線・山陽新幹線の停車駅になっている新山口駅の公共交通アクセス事情だ。
山口駅はその名の通り、瀬戸内海の海岸線まで直線距離で15kmくらい内陸に入った、県都の山口市内にある。開業は1913年2月。
一方の新山口駅は、山口駅から13kmほど南下した場所に位置していて、同じ「山口」が名称に含まれているとはいえ、お互いの駅同士は結構離れている。
駅自体の開業は1900年12月で、山口線の山口駅よりも古い歴史を持っている。新幹線の駅が併設されたのは、山陽新幹線が全通した1975年3月だ。
■物凄い他人同士
この新山口駅であるが、元々は全く違う駅名が付けられていた。「小郡(おごおり)」だ。開業当時の住所が小郡村だったのが駅名の由来。
山陽新幹線の開業時に駅名が変わったのかと思いきや、歴史を振り返ってみると、新幹線建設には付き物な、まだ見ぬムジナの皮を数える政治劇が繰り広げられたようだ。
山陽新幹線が全通する少し前。新幹線の駅が当時の小郡駅に併設されるのが決まると、県都の山口市としては、新幹線での山口への玄関口となるのを期待して「新山口駅」に改名したいと考えていた。
ところが小郡駅があるのは当時の小郡町。小郡町にしてみれば、所在地が小郡なのに何で山口市に関係する要素を入れる必要があるのかと反発。
「新山口駅」、「小郡駅」、定番の折衷案「山口小郡駅」と駅名の候補が挙げられる中、山口市が小郡町を合併させて地名の既成事実を作り、新山口駅にしてしまう強硬策まで繰り出されたと言われる。
最終的には「小郡駅」に落ち着き、山陽新幹線の駅開業当初は従来通り小郡駅と称していた。
その後、2005年に小郡町が山口市と正式に合併することになり、それに先立つ2003年10月に小郡駅の改称が行われ、現在の「新山口駅」へと変わった。
そのため山口駅と新山口駅は、元を辿れば見ず知らずの他人同士な間柄だった、と考えられそう。
■山口駅〜新山口駅間を移動するには?
そんな山口駅と新山口駅の間を、タクシーを除く公共交通機関で移動する場合、どのような手段を選べるだろうか。
まずはJR山口線が最もダイレクトな方法に思える。山口線を使えば乗り換えなし、普通列車なら所要時間23分くらいで山口←→新山口へ行ける。
ただし、山口線はディーゼルカーの走る非電化ローカル線のため、それほど本数が多いとは言えず、30分〜1時間に1本と、いつでも好きなときに山口〜新山口間をシームレスに移動できる性質はあまりない。
■バス移動でカギを握るのが「政治」!?
続いて、路線バスを使って移動できるかに注目だ。ひとまず現地へ様子を見に行って、JR山口駅の駅前に置かれているバス停標識に目を通してみる。
どうやら山口駅から直で新山口へ向かうバスは出ていない様子。前回、新神戸〜神戸のバス事情を検証して、直通するのが1系統しか見つからず、アクセスの細さに痛感させられたが、山口〜新山口のバス移動は更に工夫が必要らしい。
ではどうやったら行けるのか。少々思案していると、山口駅前のバス停に「県庁前」と表示された、JRバス中国の大型路線車が入ってきた。
県庁といえばその地域の政治の中心。政治の中心部に公共交通機関がまったく行かない、ということはなさそうで、むしろ県内・市内の各方面とを繋ぐバスが一堂に会する場所なんじゃ?
そう思って県庁前行きのバスに乗ってみることにした。県庁前を通るバスは20〜30分に1本くらいある模様。距離1.7km・所要時間6分と近く、歩いて行っても無理のない距離感だ。運賃は170円。
県庁前は上屋などグレード高めな設備で固めたバスターミナルになっていて、その点は抜かりなく政治のお膝元していると思った。
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