「武蔵○○」「越後●●」etc……駅前バス停の名前は鉄道の駅名に合わせてあるってマジ?

「武蔵○○」「越後●●」etc……駅前バス停の名前は鉄道の駅名に合わせてあるってマジ?

 「武蔵○○」や「越後●●」のような、名称に旧国名を冠した駅が全国あちこちに散らばっている。そういった駅前にバス停がある場合、停留所の名前も駅名に合わせてあるのだろうか?

文・写真:中山修一
(駅名 vs. バス停名の写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)

■鉄道事業者が付けた固有の呼び名

JR南武線の武蔵小杉駅出入口
JR南武線の武蔵小杉駅出入口

 旧国名のついた駅名は、昔の国鉄をはじめ主に鉄道事業者が付けた固有の呼び方であることが多い。これは駅を作った際、他の場所に同じ名称の駅が既に存在していた場合、重複を避けるために取った措置に由来する。大抵は先にあったほうが既得権で優先される。

 では、全国各地の旧国名つき鉄道駅の施設の前にあるバス停の名前はどうなっているのか。駅名と同じ、はたまた全く異なる名称なのか……今回は3カ所をピックアップ、それぞれ現地へ赴きチェックしてきた。

■神奈川県・武蔵小杉駅前のバス停

 はじめは神奈川県にある、古くから「コスギ」のニックネームで愛されている武蔵小杉駅だ。この駅には東急東横線・目黒線、JR南武線・横須賀線・湘南新宿ラインなどの列車が停まる。

 開業は1927年。元々は南武鉄道線の「グラウンド前停留場」という名前であったが、1944年に同鉄道線が国鉄に編入されて南武線になると、停留場だったものが駅に昇格して、武蔵小杉駅に改名された。東急線の駅開業は1945年で、駅名は国鉄準拠だ。

武蔵小杉駅北口。東急バスと川崎市営バスの要衝でもある
武蔵小杉駅北口。東急バスと川崎市営バスの要衝でもある

 武蔵小杉駅の住所を記すと、川崎市中原区小杉町三丁目にあたり、地名ベースで命名するなら「小杉」が好適。

 しかし、東京都・埼玉県・神奈川県の一部エリアの旧国名である武蔵国から取った“武蔵”を冠するのは、現・あいの風とやま鉄道が通る富山県射水市に、1899年に開業した小杉駅が既に存在していたためだ。

 その武蔵小杉駅前と近隣のバス停事情を見ると、やはり大きな駅だけあってバスターミナルと停留所が数カ所あり、一般路線バスでは、川崎市営バスや川崎鶴見臨港バス、東急バスなどが発着している。

武蔵小杉駅東口のロータリーの停留所名がコチラ
武蔵小杉駅東口のロータリーの停留所名がコチラ

 武蔵小杉駅の前ということで、バス停名も武蔵小杉駅前のように、どれも武蔵が付くのかと確認してみると、2025年2月時点では「小杉駅前」、「小杉駅東口」、「東横線小杉駅」、「横須賀線小杉駅」となっていた。

武蔵小杉駅北口の前にあるバスターミナルは小杉駅前と呼ばれる
武蔵小杉駅北口の前にあるバスターミナルは小杉駅前と呼ばれる

■愛知県最南端の鉄道駅・三河田原駅

 続いては私鉄が運営している駅から。愛知県の豊橋鉄道渥美線の終点となっている三河田原駅だ。田原市田原町東大浜に位置し、こちらも旧国名・三河国から取られた三河を冠している。

新豊橋駅から電車に揺られて約35分の三河田原駅
新豊橋駅から電車に揺られて約35分の三河田原駅

 駅の開業は1924年。当初は田原駅と称していたようだが、1年ほど経った1925年に三河田原駅に変更されている。

キレイに整備された三河田原駅のバス乗り場
キレイに整備された三河田原駅のバス乗り場

 改称の理由については、言及している資料がまったく見つからず不明。先に存在していた同名の駅に、1919年開業の現・北条鉄道の田原駅がある。

 三河田原駅の前にもバスが出入りするロータリーが置かれていて、周辺地域へのアクセスをカバーする路線バスが何系統か発着している。路線を受け持っている主なバス事業者は豊鉄バスだ。

三河田原駅のバス乗り継ぎ案内
三河田原駅のバス乗り継ぎ案内

 こちらのバス停名がどうなっているのか。前述の武蔵小杉駅 vs. 路線バスの停留所とほぼ同じ要領で、バスの乗り場は「田原駅前」である。現地には「田原駅」と、“前”の付かない表記もあった。いずれにせよ旧国名にはノータッチだ。

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