名作の誉れ高いあの映画の北海道ロケ地……バスで行けるってマジ?

名作の誉れ高いあの映画の北海道ロケ地……バスで行けるってマジ?

 映画の撮影に使われた場所が観光地化することは国内外問わずよくある。その昔公開され人気を博した名作映画のロケ地の場合、その後どうなっているのだろうか。

文・写真:中山修一
(写真付き記事はバスマガジンWEBまたはベストカーWEBをご覧ください)

■北海道が舞台!!『遙かなる山の呼び声』

名作『遙かなる山の呼び声』のロケ地になった中標津
名作『遙かなる山の呼び声』のロケ地になった中標津

 今回は、日本映画『遙かなる山の呼び声』をテーマに据えて見ていこう。同作品は1980年に公開。北海道の中標津エリアを舞台にした124分の作品で、監督・脚本が山田洋次さん、主演は高倉健さんだ。2018年には時代設定を改め単発テレビドラマ化もされている。

 ひと口に『遙かなる山の呼び声』と言っても、名シーンと呼べるものが幾つかあり、中でも鉄道の駅での一幕が印象深い。この場所がどこだったのか……舞台となった同じ中標津エリアの「上武佐(かみむさ)」という駅だ。

 上武佐駅は国鉄/JR標津線の途中駅。起点の標茶駅から10駅目、標津線の終点で海沿いの街・標津のほうが位置的には近い。上り・下りそれぞれ1日6本くらいの列車が上武佐駅を発着していた。

 映画の公開から約9年後の1989年4月、赤字ローカル線であったJR標津線の全線が廃止、上武佐駅もまた廃駅となった。

■鉄路が消えたその後のロケ地

 その後、ロケ地に選ばれた旧・上武佐駅とその周辺はどうなったのだろう? 映画自体がすでに公開から何十年も経ち、殿堂入り作品へと昇華して久しい。しかし、ロケ地を訪問する人は今もコンスタントにいるようだ。

上武佐の一つ隣にあった川北駅跡にはキハ22が保存されている
上武佐の一つ隣にあった川北駅跡にはキハ22が保存されている

 便利さとは無縁な場所であるのを強調するカットが劇中にもあったように、大変ひっそりとした空気感に包まれているのは、今もそれほど変わらないはずだ。

 道路沿いに民家が数軒並び、近隣には商店や公衆トイレもある。鉄道が廃止になり、レールやプラットホーム、駅舎ほか鉄道施設の類はすべて片付けられ、駅前広場の跡地だけが面影を残している。

 広場跡には、『遙かなる山の呼び声』のタイトルとイメージイラストが描かれた大きな看板や、当時の撮影風景の写真を添えた駅跡を示すパネル、丸太を使用したモニュメントなどが置かれ、一目でそこが映画のロケ地だったと分かる。

 ただし、2023年10月現在の様子を見る限り、イメージイラスト入りの看板と丸太のモニュメントがなくなっている。

■今も公共交通機関で行ける?

 そんな上武佐であるが、もう鉄道がないとは言え、映画のワンシーンのように今も公共交通機関で訪問できるだろうか?

 2024年3月現在も、旧・上武佐駅跡の前を路線バスが通っている。阿寒バスの標津標茶線がそれで、廃止になったJR標津線の代替バスの役割も担っている。最寄停留所は駅名と同じ「上武佐」だ。

 平日ダイヤでは中標津方面に6本、標津方面に5本のバスが上武佐を経由する。しかしここでは、どの場所から上武佐にアプローチするかも重要なポイントになる。実はここ数年のうちにバスが減便した関係で、だいぶ勝手が変わったのに気付いた。

標茶駅前バス停に停車中の阿寒バス
標茶駅前バス停に停車中の阿寒バス

 例えば、JR釧網本線の標茶駅からバスに乗り換えて行こうとした場合、直行するのは朝6:15発のみ。次でも行けなくはないが、標茶16:00発の上に途中で乗り換えが必要となる。所要時間は約2時間。

 とどのつまり標茶〜上武佐を直で(明るい時間帯に)行こうとするのは大変ということだ。より確実性が高いのは中標津に前乗りして、翌日に上武佐へ向かうパターン。

 この場合、中標津バスターミナル10:49発に乗ると、11:04に上武佐に着ける。ところがここでもう一つ高い壁が現れる。上武佐から更に標津方面へ進む場合約5時間、来た道を戻る場合も2時間40分程度のバス待ちが生じる。

 一方、標津から9:20発のバスに乗ると上武佐着が9:44。11:04発の標津行きで戻る行程なら、現地滞在時間は1時間20分。バスだけを頼ってアクセスするなら、このプランが現実的か。その前にどうやって標津まで行くかが思案のしどころでもある。

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