全国に25,000以上あると言われる路線バスの中で、都県境を越える一般路線バスとなれば、極端なまでに数が減る。そんな県境越えバスの様子を見に行くシリーズの第19弾目くらいに注目するのは、そういえばこれ県境越えるよね? と、乗っている最中にハタと気付いた、京急バス「空51系統」だ。
文・写真:中山修一
(バスマガジンWeb/ベストカーWebギャラリー内に、京急バス空51系統の写真があります)
■驚くほど少ない(?)東京都/神奈川県を跨ぐ路線バス
東京23区のうち世田谷区と大田区は、神奈川県川崎市と背中合わせの位置関係。世田谷・大田区と川崎市の間には多摩川が流れており、そこに東京都/神奈川県の都県境が引かれている。
東京都/神奈川県には、都県両方の営業免許を持ったバス事業者が幾つかあり、同じカラーリングの路線バスが東京と神奈川を走っている様子を良く見かける。
とはいえ、同じバス事業者であっても、ほとんどの場合は東京都と神奈川県とで、運行を受け持つ営業所が異なるため、シームレスに都県境を行き来するバス路線というのは、他府県と同様に極少数派。
そのまま多摩川をスルーしてくれるバスも然りで、膨大な路線バス網が広がる東京/神奈川をもってしても、割と難しいのが多摩川越えだったりする。
■超メジャーどころを繋ぐ路線
多摩川を通る路線バスに、五反田駅〜川崎駅を結ぶ、東急バスの「反01系統」があり、これが代表的な路線の一つに挙げられる。ちょっとマニアックなところでは、臨港バスの一部系統にも多摩川越えをするものが見られる。
このほか、東京都/神奈川県にバスネットワークを持つ京急バスにも、多摩川に架かる橋を渡るものが2路線・4系統ほどあり、この4つの系統の中でもとりわけ華やかさを放つのが「空51系統」だ。
このバスの片側の始発/終点は、川崎市内を代表するターミナル駅である川崎駅前。一方の始発/終点がどこかと言えば、系統に「空」が付く通り、行くだけでも旅のロマンを嗜める、東京都大田区の羽田空港だ。
駅〜空港間のアクセスに使える、高速道路を通らない普通の路線バスは少し珍しげな毛並みをしているが、さらに都県境を跨いでしまうとなれば、空51系統がなかなかどうして光り輝く存在に思えてくる。
■地域に根ざした地元の足
京急バスの空51系統は、川崎駅前〜羽田空港第3・第2・第1ターミナルまで14.2kmの距離を結んでいる。日中おおむね30分に1本のダイヤ設定と、多くはないが肩肘張らずに利用できるくらいの本数が出ている。
バスが走る経路を見ると、ちょうど多摩川と京急空港線の間あたりを通り抜けていくイメージ。このエリアは住宅地でもあり、空51系統に乗ってみると、空港へ行くバスながらも地元の足として活用されている光景が見られる。
さらに、羽田周辺は神社をはじめ、観光で見て回れるスポットが点在していて散策するのも楽しい場所。他の京急バスの系統と組み合わせて、周辺のちょっとした移動にも空51系統が役立ちそうだ。
■やっぱり短いです
川崎駅と羽田空港……14.2kmの距離が示す通り、近そうに見えて意外と離れた位置関係。それもあって空51系統を全区間乗り通すと、所要時間50分と案外ボリュームが大きい。
所要時間50分のうち、羽田空港第1〜第3ターミナル内の移動に12分要するのもミソ。隣り合わせっぽいターミナルも、道伝いに行くとグルグル回って距離が約5kmに伸びてしまうため、12分かかるのもそれ相応といったところ。
また、空51系統の運行を受け持つのは羽田営業所で、県境越え系路線バスの図式に準えると、羽田空港→川崎駅が順方向、神奈川県がアウェー側ということになる。
上記を踏まえて、空51系統の神奈川県内の走行距離を見てみると約1.4km。空51系統もまた、アウェー側にはちょこっとだけしか入らない“お約束”に則っていると言えそうだ。
運賃は300円。前乗り・中降りの運賃先払い方式で、基本運賃は240円なのであるが、全区間を乗り通す場合は「羽田空港特定区間」として60円の追加運賃がかかる。
そのため空港まで行く際は事前申告が必要。ただし乗車の際に払い忘れても、降りる時に伝えればその時に精算してもらえる。
【バス路線の基本データ】
京急バス 空51系統(羽田空港第1ターミナル〜川崎駅前)
・跨ぐ都県:東京都 → 神奈川県
・移動距離:14.2km
・所要時間:50分
・運賃:300円
・停留所の総数:25
・神奈川県内の区間距離:約1.4km
・神奈川県内の停留所の数:5
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