全国に25,000以上あると言われる路線バスの中で、都県境を越える一般路線バスとなれば、極端なまでに数が減る。そんな県境越えバスの様子を見に行くシリーズの第17弾目くらいに訪れたのは、島根県を走る石見交通の「二条線」だ。
文・写真:中山修一
(バスマガジンWeb/ベストカーWebギャラリー内に、島根県を走る県境越え路線バスの現地ロケ写真があります)
■島根県と山口県を跨ぐ路線バス
西日本の日本海側にある島根県と、そのお隣の山口県の間には、お互いの県境を越えて直通で乗り入れる、高速バスではない一般路線バスが何路線か運行していて、島根県の民営バス事業者の石見交通による「二条線」もその一つだ。
二条線は、島根県益田市の「益田医光寺」を始発に、山口県萩市にある「小島」停留所までの間、およそ25.8kmの区間を結ぶ県境越え系の一般路線バスだ。
系統番号はなく、路線名と始発・終点のバス停名が一致しないタイプで、この手の路線を楽しく乗って遊ぶには、当日に現地でバス停標識の案内を見て「あれ、どれだっけ?」と固まらないよう、路線名と行き先を確実に覚えておくのが秘訣。
■大きな駅を通ります
二条線が通る特に規模の大きな場所は、JR山陰本線と山口線の益田駅前だ。駅は途中の経由地で、始発の益田医光寺停留所は駅から3kmほど先にある。
益田医光寺がどんな所なのか、それはそれで気になるところであるが、後ほど様子を見に行くとして、とりあえず駅から乗ってみることにした。
訪問当日は2025年3月下旬の日曜日。JR線換算で41.2km離れた浜田駅から、6:38発の普通列車で益田駅にアプローチ、駅前を8:10に出発する、小島行きの初バスを狙った。
二条線は上り/下りそれぞれ平日6本・土日祝4本。好きな時間に行ったところでそう簡単には乗せてもらえない、県境越え系路線バスによくある性格を持った、至ってローカルなダイヤ設定だ。
ちなみに、益田駅にはどうやらコインロッカーがないようなので、スーツケース等の増槽を引いている場合は少し工夫が要るかも。
■狭隘ファン垂涎
自分の乗りたいバスほど決まって時間通りに来ないのは、どの路線バスでも定番の不思議。この日もそうで、定刻2分後くらいに「小島」と表示されたバスが駅ロータリーに入ってきた。
車両はローカル路線でもおなじみの中型路線車・いすゞエルガミオのうち、型式の数字が「234」のタイプ。角目ヘッドライトを縦に2個配置した、2007〜11年まで作られたバリエーションと見られる。
益田駅のバス停には何人かバス待ちをしているお客さんがいたものの、やってきたバスに次々と乗って行き、二条線が入ってきた時には他に誰もいなくなっていた。1名乗車で駅を出発。
山陰本線から分岐してすぐの所を交差している、山口線の踏切を渡り、バスは一挙郊外へ向けて進んでいく。まずは島根県道14号線がメインルートになる。
だんだんと建物がなくなり、田畑が増え周囲が緑に囲まれたエリアへと景色が変わっていくのが、車窓を眺めていても、まじまじと分かる。
基本的には片側1車線の舗装路を通っていくが、途中で幅員減少して0.5車線になったり、広めの道から一旦外れて、すれ違い通行するにはピールP50でもテクが必須と思えるような、物凄く狭い道に入ったり……
……“中型”と言っても、自動車としては大柄な車体を難なく進ませる、運転技術のカタルシスを放つ走行シーンは、狭隘路線LOVEな向きには堪えられない瞬間。乗りバス満足度は十分だ。
なお、路線名にもなっている「二条」は経路の途中、益田市の西寄りの県境に程近い位置にある。
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