■電気で明るく光らせる夢の技術・LED
巻き上げ式方向幕は少なくとも80年以上、第一線で使われ続けた。そんな不動の地位を築いた方向幕にも転機が訪れる。LEDを利用した機器の実用化と普及だ。
LEDは、電気を通わせると光る性質を持った半導体の一種で、日本の公共交通機関には1988年に初めてLED式の行先表示器が電車に導入された。
乗り物の行先表示器に使うLEDを見ると、豆電球をさらに小さくしたような形(砲弾型ともいう)をしている。
このLEDを横長の基板にたくさん並べ、特定の位置のLEDだけを光らせて文字数字記号のように見せる仕組みになっている。いわゆるドット絵だ。
「幕」に相当する部品を持たないということで、呼び方も方向幕から行先表示器へと変わっている。とはいえ、昔ながらの表現を残したLED方向幕でも、趣味レベルなら全く問題ない。
アナログ方向幕の場合、バス路線の追加や廃止、経由地の変更などがあると幕の内容を改修、あるいは幕をまるごと新調する必要があり、コストと手間の問題が少なからずあった。
LED行先表示器なら、表示させたいデータを書き換えるだけで済むのに加え、機械的に動作する部分がないため、方向幕+巻取機に比べると保守点検がしやすく、世代交代役としての十分なポテンシャルを秘めていたわけだ。
そんなLED行先表示器がバス車両に本格投入され始めたのは2000年代だ。ある日を境に方向幕からLEDに突然切り替わったわけではなく、10年ほどかけて徐々に世代交代していったイメージが強い。
2023年現在はまさにLED天国といった様相で、路線バスに搭載されている行先表示器の殆どがLED式になっている。方向幕付きの路線車も絶滅こそしていないが、なかなか希少な存在へと軸足を移して久しい。
■日本ではあまり見かけない? こんな行先表示器
日本のバス車両ではあまり見たことがないが、世界を見渡すと上記以外の表示方法を使用した行先表示器が存在する。フリップディスク式と呼ばれるものだ。
片面を黒色、もう片面を目立つ色に塗った小さなディスクを表示装置にいくつも並べて、磁石の力でディスクの裏表を切り替える。
特定の位置だけ色付きの面を出せば、文字のように見えるわけだ。LED式と同じ要領であり、フリップディスク式はその元祖とも取れる。
大まかに言えば、板 → 幕 → 電子部品へと転身を繰り返した行先表示器。電子部品の天下であるのは前述の通りであるが、実は最も初期の板式(サボ)もまだ使われている。
世代は変わると言えど、上記のうち完全に消えてしまった表現手段も今のところなかったりする。
【画像ギャラリー】年代で変わるバスの行先表示器(10枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方