夜間に路線バスを営業運転する時、客室内の照明を点灯させる義務がある。そのため車内に必ず室内灯が付いているが、特に路線車の場合、大昔から室内灯は白く光るのが当たり前で、形もあまり変わっていない気がする。
今回はちょっと天井を見上げて、路線車の室内灯に注目だ。
文・写真:中山修一
一体いつから白色だったのか!?
少し前まで、白っぽく光る照明といえば蛍光灯であった。蛍光灯が登場する以前となれば、自ずと白熱電球が取り付けられていたハズであるが、意外にも蛍光灯の実用化は早く、電球室内灯の路線車となると相当時代を遡るようだ。
バス車両に蛍光灯が標準装備されるようになった年代がいつだったのか、残念ながら資料が全く見つからず、はっきりした時期は不明である。
代わりに鉄道の歴史をなぞってみると、蛍光灯付きの電車が初めて走ったのは1948年と言われる。当初は照明器具が故障しやすかったようで、4年ほど経った1952年頃から普及が始まっている。
推測のレベルにとどまってしまうが、路線バス車両への蛍光灯採用も概ねこの時期だったと思われる。一般家庭で蛍光灯が次第に浸透していったのも1950年代前半からだ。
ただし、現在の道路交通法が公布されたのは1960年で、それ以前の道路交通取締法では規定が大きく異なっていた(規定がなかった)可能性も考えられる。
蛍光灯の形状は直管形か環形か……
蛍光灯を形状で大別すると、直管形と環形の2種類になる。日本で製造されたものは直管形の方が先の1940年、環形が1953年だ。
路線バス用室内灯にも直管形と環形それぞれに対応した照明機器が用意されている。どちらかと言えばボンネットバスのようなクラシック路線車に、環形の照明がよく取り付けられている印象だ。
路線車では最近の採用例こそ少ない環形照明も製造は続いており、一部の路線車や高速車・貸切車で使われている。車内スピーカーと一体型のタイプもある。
一方の直管形もボンネットバスの時代から採用されている。こちらは非常にポピュラーなスタイルとして定着、現在の路線車用室内照明の基礎になっている。
実は3種類ある並べ方のちがい
路線車では、直管形の蛍光灯(主に20W)を1〜2本差し込んで、半透明のプラスチックカバーを被せてユニットにしたものが頻繁に使われる。
千鳥配置、一列配置、照明全体が一体に見えるよう前方から後方までプラスチックカバーを繋げた連続配置の3種類に照明機器の並べ方が分けられる。
室内を煌々と照らしてしまうと夜間の運行に支障が出るため、点灯させた際の明るさはどの並べ方も大差ない。連続配置はデザイン上カバーを連結させているだけで、実際に点灯する照明の数は千鳥配置と同じだ。
デザインの差異はメーカーによって多少あるものの、基本的な要素はどの年式の路線車も似たようなもので、昔からそれほど変わっていない。
ちなみに角丸長方形にドーム型のカバーを取り付けた照明ユニットを、通称「わらじ型」と呼ぶ。
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