備北交通・広島電・西日本旅客鉄道は、広島駅・三次駅間を破格で往復できる企画乗車券「バス&レール どっちも割きっぷ」を共同で販売する。同区間で競合する高速バスとJR芸備線で共通きっぷを発売することにより、利用可能便数が増える。この約半額の価格については、三次市の支援を受けて実現している。発売額を含めて詳細を見てみよう。
文:古川智規(バスマガジン編集部)
【画像ギャラリー】広島・三次をバスと鉄道で往復して約半額!「バス&レール どっちも割きっぷ」を発売(5枚)画像ギャラリー往復で約半額の破格!
きっぷの概要は次の通りだ。名称は「バス&レール どっちも割きっぷ」、利用区間は、高速乗合バスの広島駅新幹線口・三次駅前間(備北交通・広島電鉄)、JR芸備線の広島駅・三次駅間(JR西日本)で、バスと列車を必ず1回ずつ利用するルールだ。使用順序はどちらが先でも後でも構わない。
利用期間は2021年11月13日(土)から2022年3月31日(木)までで、発売期間も同期間。発売額は往復セットで1500円で三次市から支援を受けて販売する。参考までに高速バスの片道運賃は1530円で、JR芸備線の運賃は1340円、合計2870円になるのでこの乗車券を利用することにより約半額で往復できることになる。
発売窓口は広島側はJR広島駅新幹線口1階バスきっぷ売り場(交通案内所)の他、広島電鉄広島駅営業センター、広島電鉄紙屋町定期券窓口で、また三次側では三次市交通観光センター交通案内窓口(三次駅前)。
これだけでも十分お得だが、さらに特典として広島発売分については三次市内タクシー利用券300円分が、三次発売分には三次駅西駐車場割引券300円分が付いてくる。
競合路線に自治体の支援が付く現実
鉄道では広島と三次を通しで運転する列車は毎時1-2本、所要時間は本数は少ないが快速で80分程度だ。高速バスは概ね毎時1本で所要時間は100分程度。
競合する鉄道と高速バスが同じ区間で共同で企画乗車券を発売するケースは多くないが、自治体が支援することにより実現したようだ。乗車率が高く事業者に体力があればお互いの便数は増え、運賃も下がり沿線住民は便利になる。
しかしそもそも便数が多くない地方の都市間高速バスや鉄道の地方交通線は赤字なのでお互いに体力をなくし、「廃止」の二文字がちらつくようになる。割を食うのは人口の少ない地方都市側で、自治体はこれらの大都市への足を確保するために何らかの支援を検討せざるを得なくなる。
地域の足としてのコミュニティバスはすでに普及している感があるが、都市間高速バスや鉄道線にも支援の手が伸びることは利用者にとってはうれしいことではあるが、長い目で見ると地方のバスや鉄道を取り巻く環境は非常に厳しいものであることが浮き彫りになったともいえる。