タイトルに偽りアリ!? 高速道路開通前の北海道長距離バス【高速バスアーカイブ第13弾】

タイトルに偽りアリ!? 高速道路開通前の北海道長距離バス【高速バスアーカイブ第13弾】

 古き良き、高速バスが百花繚乱だった時代のルートや車両をアーカイブ記事として紹介するこのコーナー。今回は洞爺湖温泉から函館駅に至るルートで運航されていた函館バスをご紹介する。

 北海道の道央には白老、登別など有名な温泉が数多いが、その中でも洞爺湖温泉は全国区の知名度を持つ名湯のひとつだ。

 1990年の夏、その道南最大都市への長距離路線が夏季中心(4月29日〜10月31日)に運行されていた。そのバスに乗車した当時を振り返る。

 今回はルート上の高速道路が開通する以前の話なので、正確には高速バスではないが、それに近い存在だった長距離バスを取り上げる。

●データ
洞爺湖温泉〜函館駅/函館バス
相手会社/道南バス

執筆/写真:石川正臣
※2019年7月発売「バスマガジンVol.96」より

【画像ギャラリー】一般道だけを走る長距離バスがあった!!


バス車体が進化する過程にあった頃の最新型に乗っての旅

相手会社、道南バスの車両。ホワイトとグリーンの配色がシックな印象だった
相手会社、道南バスの車両。ホワイトとグリーンの配色がシックな印象だった

 夏の観光シーズンともなると洞爺湖温泉には観光バスがひしめく。洞爺湖温泉のバスターミナルにも各地へ運行されている長距離バスが待機し、利用者がそれぞれに目的地を確認している。

 そんな中、13時30分発・函館行きの長距離便が着車した。函館バスのこの車両は三菱車体のフルデッカー。スケルトンタイプなので当時としては他車に引け目を取ることはないが、後部はモノコック。しかしその当時、見た感じは新しさを強く感じる流行車だった。

 洞爺湖で温泉だけでなく十分に休暇を楽しんだ子供中心の家族連れが乗り込み、長いバス旅が始まる。左手には有名な火山である有珠山、昭和新山、上り坂を進めば背後に洞爺湖温泉が美しく望め、だんだんと遠のいていく。ヘアピンカーブを下りれば洞爺駅に到着。ここからは地元客も乗って来る。

 左手車窓では、青い海が白い波となって砂浜に消えてゆく風景が映し出される。この深い青さが北海道の夏を象徴し、豊かな生態系が育まれているのだろう。

一般道だけを走る北海道らしい長距離バス。復活に期待!!

函館へ向けて乗車開始。いよいよ洞爺湖温泉ターミナルを出発する
函館へ向けて乗車開始。いよいよ洞爺湖温泉ターミナルを出発する

 バスはこの内浦湾沿いに国道37号線を走行し函館までこの内浦湾を約半周する。対する内陸側の景色は北海道らしい若草萌ゆる台地。緑濃い原野が続く。美しい自然あふれる原野で育つ草花野菜が美味なのは実感できる。

牛たちも道東に負けず、景色に同化するほどに放牧されている姿が目に付き、北海道の広大なスケールを再認識した。

 1時間ほどで長万部に到着、ここからは国道5号線と合流し30分ほどで八雲へ。さらに40分で森に到着する。森では渡島ドライブインで10分間の休憩時間があり、乗客は車外で身体を伸ばす。ドライブインでの休憩は、高速道路のサービスエリアとは違った味覚が楽しめ、バスに戻った乗客の多くが地元の名産グルメを手にしていた。ここまで来ると前方に駒ケ岳が望める。

 しばらく内浦湾と並行してきたがここからは内陸に入る。大沼のきれいな眺め、『ようこそ夜景と坂道の美しい函館市へ』の看板が見え、バスはいよいよ函館市内へ。道の両側に並ぶ松並木の美しい道を経て、五稜郭、松風町を過ぎて終点の函館駅に到着した。

 当時の運賃は片道2600円。所用時間は3時間20分。洞爺以外では降車のみで区間乗車ができない運行プログラムだったが、通しで乗る人にとっては時間がかかり過ぎるルートだった。

 当時はまだ高速道路が通っていなかったが、現在は大沼まで開通している。今後の路線復活も期待したいステキなバスルートだった。

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