大日本印刷と肥後銀行、肥銀カード、九州産交バスは、共同で熊本地域振興ICカード「くまモンのIC カード」の“モバイル化”事業の一貫として、2022年2月下旬から九州産交バスの路線において実証実験を実施する。
文:三条桐葭
編集:古川智規(バスマガジン編集部)
導入側も利用者側も敷居が低い!
本実証実験は、大日本印刷が新たに開発したNFCタグを活用し、乗降区間によって料金が変わる地方のバスでスマートフォンで決済できるシステムを検証するものだ。 地方のバス事業者は、読取端末を導入する必要なく、低コストでキャッシュレス決済対応ができるため、経営効率の改善が見込まれる。
また同じNFCタグを地域に密着した店舗などに配置することで、地方・地域全体のキャッシュレス化も可能になるため、スマートシティやMaaS(Mobility as a Service、移動手段のサービス化)領域にも活用できる。
本システムでは、バスの運賃箱のほか店舗や施設に、あらかじめ発行した薄い小型の紙やシール形状のNFCタグを貼付・配置することで、決済端末等の特別な機器を設置せずキャッシュレス決済サービスを導入することが可能。
利用者はスマートフォンをNFCタグにタッチすることにより乗降車情報を蓄積し、ロケーションシステム等の位置情報を掛け合わせることで乗降車区間を識別する。
利用者のスマートフォンがオンラインに接続したタイミングで、クラウドサーバー上で決済を完了させる。NFCタグを読み取る乗降車時の通信環境に左右されないため、山間部など電波の届きにくい場所でも利用できることが想定されている。
次世代の乗車方法か?
公共交通機関では現金や紙の乗車券の他にICカード乗車券やバーコード決済等の運賃支払い方法が普及・模索されているが、NFCタグは写真撮影による複製ができずセキュリティー上のメリットがある。また多くのスマホには規格化されたNFCリーダーが実装されており利用者側のハードルも低い。
肥後銀行グループはスマートシティにおける決済の中心インフラとして「くまモンのIC カード」の決済基盤を提供し「決済データ」をベースに地域の高精度な人流データを生成することにより、地域循環型エコシステムの構築を目指す。
九州産交バスは本実証実験で得た知見を活かし、一人でも多くの路線バス利用をうながし、日常生活を支える移動手段としてバスサービスの維持・拡充を目指す。それぞれの思惑が一致した実証で技術やノウハウを蓄積したい考え。
商業ベースにのせて一般利用できるのはもう少し先になりそうだ。次世代のバス乗車方法の一つの解答なのかもしれない。
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