バスのお仕事とは、なにも運転士だけではない。貸切バスのバスガイドも重要な職業だ。現役バスガイドが楽しく真剣に仕事の魅力や大失敗談を赤裸々に語る「へっぽこバスガイドの珍道中」。今回は絶滅危惧種のバスガイドがそれでも必要な理由をお話しする。
文/写真:町田奈子
編集:古川智規(バスマガジン編集部)
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■貸切バスもワンマンの時代に!
近年はバスの運賃高騰により、バスガイドを付けるお客様は年々減少している。どこの事業者でもワンマン化が進み、その流れは林間学校や修学旅行にまで及んでいる。「安く、効率よく」が旅の前提となりつつある。
社員旅行はコロナ禍以降激減し、団体旅行そのものが少なくなった。スマートフォンひとつで宿も取れ、観光地の情報も簡単に手に入る。わざわざ団体ツアーに参加しなくても、個人で旅が完結してしまう。特に若い世代にとっては、それがごく自然な選択なのかもしれない。
■持っているのは「確かな人の温度」だ!
では個人旅行が主流となった現代において、私たち絶滅危惧種と言われるバスガイドの存在意義とは何だろうか。その答えの一つは、人の温かみにある。観光案内という点だけを見れば、AIでも十分に代替が可能だ。実際に教本の内容を要約し、分かりやすく伝えることは技術の進化によって容易になってきている。
しかし、そこに“温度”はあるだろうか。実際に足を運び、見て感じたことを自分の言葉で語る。「それ、やってみたい」「行ってみたい」「食べてみたい」そんな気持ちが芽生えるのは体験に裏打ちされた“生の声”があるからこそだ。
そして、バスガイドの最大の役割は、文化や歴史を次の世代へと手渡していくことにある。一例を挙げよう。東京の観光地でほぼ必ずと言っていいほど行く浅草の浅草寺や仲見世の流行といえばなんだろうか。スマホで調べれば出てくることなので、答えは簡単だがAIに聞くとスイーツや食べ歩きがヒットする。
その2番目に出てくるのが「ジャンボめろんぱん(浅草花月堂):1日3000個売れる人気商品」だ。浅草のメロンパンは有名になっていて、各店で販売されるがそれぞれが異なる。テレビでも紹介されたので有名になったが、火付け役はあの「はとバス」のガイドなのは知られていない。
はとバスのガイドが浅草で見つけてツアーで紹介し、おススメされて購入した乗客が美味しくて映えるとSNSや口コミで広げたのがそもそもだったのだ。
足で見つけて自分で開拓してしまう姿勢には頭が下がる。見つけた時点ではガイドの主観かもしれないが、後に客観的人気として認知される情報をバスガイドはいわゆる「バスる」以前に持っているという好例だ。
■画一的なガイドの方がいいのか?
私たちの日常は、誰かの努力や犠牲やひらめきの積み重ねの上に成り立っている。それを知り、語りあるいは忘れずに伝えていくことが重要なのだ。過去を振り返るためではなく、未来へとつなぐためにである。その役割を担ってきたのが、バスガイドという存在だった。
一方でこの仕事は今、形を変える岐路に立っている。これからのバスガイドは「こうあるべき」という一つの型に当てはめられる存在である必要はないのかもしれない。
声質や話し方、得意分野や距離の取り方等、バスガイド一人ひとりが持つ個性は本来的に異なる。それにもかかわらず同じ正解だけを求め続けることで、この仕事が「楽しい」よりも「苦しい」に変わってしまうことがある。
仕事なので楽しいだけではないが、楽しい要素がたくさんあるのにそれを感じられない画一的な問題が潜んでいるようにも感じる。貸切バスにバスガイド(車掌)が必ずしも必要でなくなったことで、なおさらガイド業が画一的になってきているのも事実だ。
もっとも、その方が楽だというタイプの人もいるので否定するわけではないが、乗客の心に残るガイドとは画一的なものではないのも事実だろう。




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