JRで7.7km、10分足らずの駅間を1時間以上かけて走るかなり遠回りな路線バスに乗ってきたのでレポートする。それは西鉄バス北九州の42番、区間は戸畑駅-黒崎駅間(いずれも鹿児島本線)だ。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
(詳細写真は記事末尾の画像ギャラリーからご覧ください)
■バスが遅いのは確かだが……
戸畑-黒崎間はJRでは7.7kmで、普通電車で10分とかからない距離だ。いくらバスが遅いからとはいえ、電車で10分の距離を1時間はかかりすぎだ。理由はかなりの回り道をするからなのだが、文字通り山あり谷ありの起伏にとんだ路線だった。途中の停留所は50を超える!!
ちなみに鹿児島本線の駅の順序は門司港方から戸畑・枝光・スペースワールド・八幡・黒崎という並びだ。件の42番は大谷線と称し戸畑から八幡駅または西鉄黒崎バスセンターまでの区間を運行する。もちろん鹿児島本線沿いに「普通」に走る路線バスもあるが、それでも50分近くかかる。
よって戸畑から黒崎に行くには鉄道以外に選択肢にはなり得ず、これらの路線バスはあくまでも両端や途中駅への連絡がその使命だといえる。ターミナル間を結ぶ路線の方が営業所が近く待機場所もあることから好都合でもある。
■始発地ではなく、戸畑駅から乗車
今回は始発地の製鉄飛幡門ではなく戸畑駅から乗車した。狭隘路路線らしくやってきたのは中型のエルガミオ。乗車は記者1名で、ほかに乗っていた人はいなかったので貸切状態で出発した。戸畑区の中心部で数名の乗客を拾い、幹線道路を走るがすぐに狭い道に入っていく。しかもいきなり急坂を登り始める。
かつてスペースワールドに行ったことがある方ならば、海を背にして正面には山が立ちはだかっていたのを覚えているかもしれない。その山を登り始める。標高は大したことはないが、短い距離で高さを増していくのであっという間に北九州市戸畑区を中心とした高所からの風景が広がる。
■坂道にはなんといってもバスが必要!
このような急な坂道や斜面に広がる住宅地にはバスが必要で、戸畑区内で乗せた乗客は降りていくが、反対に次の駅までの乗客を乗せていくので全体の乗車人員は大きく変わらない。
戸畑駅を出て30分近く経過したのちにようやく鉄道では次の駅である枝光駅前に到着した。ここからしばらくの間は鹿児島本線沿いに走りスペースワールド跡地にオープンしたアウトレットを経由して八幡東区の中心地である中央町付近を通過する。
そのまま鉄道沿いに走るとすぐに八幡駅に出るのだが、そこから進路を北に向けて正面に山が見えると、また坂道を登り始める。こうして皿倉山への登山口である帆柱登山口付近をサミットに、八幡駅方面に向けて下り始める。
北九州都市高速道路4号線を走る高速バスや路線バスから見えるおなじみの光景だが、その都市高速の下あたりを山肌沿いに走る。
■八幡駅には入らず!
42番は八幡駅発着便もあり、これらは山から下りてまっすぐに八幡駅に向かうが、当便は八幡駅には入らずに西に向けて黒崎を目指す。戸畑駅を出て1時間を超えたあたりで黒崎駅付近に到達し、西鉄黒崎バスセンターに到着する。
前述したとおり、他の路線を含めて通しで乗車する人はほとんどいないと思われるので、鉄道駅とのフィーダー線をうまくつないだ形の路線だ。駅間の中間地ではどちらの駅にも都合の良いダイヤで向かうことができるので、本数こそ少なくても乗車チャンスは多くなるまさに生活路線だ。
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