みんな大好き「連節バス」のメルセデスベンツ・シターロG。全国の都市で導入実績があるが、1路線を通しで往復乗車してみたのでレポートする。乗車したのは西鉄バス北九州の小倉(砂津)から西鉄黒崎バスセンターまでの約13kmだ。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
(詳細写真は記事末尾の画像ギャラリーからご覧ください)
■まずは路線の紹介をいたしますと……
砂津から黒崎までのこの路線は西鉄バス北九州の「特快1番」だ。13kmほどの距離を約50分かけて走破する。各停便の1番もあるが、こちらには連節車は入らない。もっとも特快が全便連節車ではないので必ず特快=連節車ではない。
特快という優等種別を名乗っているからにはさぞかし速いのだろうと思うかもしれないが、ダイヤ上の各停便との違いは約6分ほどだ。ルートが同じで都市高速を通るワープルートでもなく、単純に主要停留所しか停車しないというだけだ。
連節車の特性上、乗降に時間がかかるので各停便との優位性はそれで帳消しになることもしばしばだが、停車停留所が約半分なので体感ではかなり短時間に感じることも事実だ。ちなみに小倉駅-黒崎駅間は鉄道だと普通電車でも約18分だ。
■ブルーの連接バスはベンツ・シターロG!!
特快1番の運用に入るシターロGは鮮やかなブルーで、かなりカッコよい。別路線の恒見営業所に行く特快10番はピンクでそれぞれが基本的には専用車として運用につく。
どこの事業者でも同じような乗降方法を採用しているが、西鉄バス北九州でも乗車は2番ドアと3番ドア(便宜上、前から1番・2番・3番と呼ぶことにする)から乗車する。現金の場合は整理券を取り、ICの場合はタッチする。降車は基本的に運転席横の1番ドアからだがICの場合はタッチして3番ドアからでも降車可能だ。
ノンステップでタイヤハウスや連節部分があることから、座席配列はかなり変則的で前向きあり、向かい合わせのボックスあり、後ろ向きあり、横向きありと多彩だ。
乗客の様子を眺めていると、満席近いときは仕方がなく座れるところに席を求めている感じだが、すいてくるとめいめいが移動して前向きの座席に座りなおしている光景が見られた。
■輸入車の特徴は座面にあり?
輸入車のコミューターバスの特徴はなんと言っても座面にある。とにかく硬い。クッション性は皆無で広い狭いを論じる前に硬いという印象が先に来る。小倉-黒崎間を50分かけて乗り通す人はあまり多くないだろうが、それでもお尻が痛い。
と思っていたのだが、ほぼ全線を乗り通す人は多くはないものの確かにいた。そういう人もいるのだと思ったが、どう見てもバスファンではなさそうなので話を聞いてみた。
■理由は全線定期のため?
ほぼ全線を乗車していた二十歳の美容師さんは、八幡西区から小倉北区まで通勤するとのこと。自宅から駅までのバスと、そこからJRの定期券を買い足すよりも西鉄バス北九州の全線定期券「得パス」を購入したほうが安いらしい。
朝は都市高速経由の路線バスを利用できるので電車を使うよりも早くて便利だが、帰りは仕事の都合で本数が少ない決まった便に乗れないと、小倉から黒崎を経由してバスを乗り継ぐことになるという。以前に記者が乗りバスレポートした「香月快速」あたりの話だろう。
そうなると最も速いのは特快1番になるので、ほぼ全線を乗り通すのだそうだ。乗る機会が多いだろうシターロGの感想を聞いてみた。「仕方がないですけど私はイヤですね。乗り心地悪いしお尻が痛くなります!」と、かなりご立腹のようだ。
確かに3軸の連節車は独特な揺れ方をするし、前述したように座面が硬いのでお尻が痛くなる。彼女の感想はバスファンではない純粋な一般利用者のもっともな意見だろう。
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