都県境を徒歩で越えてバスを乗り継いだ!! 乗換アプリを信じて進むと……行程が強烈すぎた!!

都県境を徒歩で越えてバスを乗り継いだ!! 乗換アプリを信じて進むと……行程が強烈すぎた!!

 路線バスは同じ都道府県内で完結するのが普通。それでも都府県境を徒歩で越えるとバスに乗り継げる場所が少なからずある。乗換アプリでも出る“ごくフツーの”徒歩を挟んだ行き方を実際に試してみよう。

文・写真:中山修一

■埼玉県から東京都へバスだけで行く

埼玉県の飯能駅から出ているバスが都県境越えルートに!?
埼玉県の飯能駅から出ているバスが都県境越えルートに!?

 埼玉県の飯能から東京都の青梅へ向かう場合、通常なら電車を利用して1時間ちょっとだ。ここで「バスだけで行く」という条件を付けても、西武バスと都営バスの乗り換えで行ける。

 上記のルートを選んでおけば全く問題ないのだが、乗り物でエンタメする目的ならバスで飯能市の奥を目指し、徒歩移動を挟み、東京都内のバス停にたどり着いて乗り継ぐという、ローカル路線バスの旅を彷彿とさせる経路も見逃すわけにはいかない。

 実はこの経路、普通の乗換アプリでも検索ワード次第では出てくるのだ。アプリが勧めてくるなら“ごくフツー”の行き方とも取れる。

 有名なJ社の乗換アプリ情報によると、埼玉県側のバス停から東京都側のバス停まで「距離およそ1.5km、所要時間23分」とある。これなら散歩がてらに……そう考え現地へ赴いた。

■チャンスはなんと1日1回だけ?

 埼玉県側は国際興業バス、東京都側は都営バスを使う。前者は1時間に1本くらいバスが出ているが、後者の本数が極端に少ないため、確実に乗り継ぎができるよう、埼玉県側からピンポイントに便を選んでおく必要がある。

 そうなると、9:25に飯能駅を出発する「飯03-2系統 名郷行」1本のみが、現実的な時間帯に使える唯一の便だ。思いのほか狭き門である。

 出発の10分ほど前に飯能駅前のロータリーへ向かった。飯03-2系統は行楽地へのアクセス役を担う観光路線の一種と言える。月曜日だったが、すでに乗り場には結構な行列ができていた。

 途中に学校もあるようで、始発の段階から行楽と通学利用者が入り混じって車内は満員に近くなった。車両は縦に2つライトが並ぶ大型路線車のいすゞエルガだ。

■まったり散策……の、はずだったのだが!?

 飯03-2系統を全区間通しで乗ると約1時間のバス旅になる。東京都へ歩いて行くなら、飯能からおよそ15km、34分くらい行った先の「久林」という停留所で降りる。

 「ひさばやし」と読みたくなるところではあるものの、ここでは「くばやし」が正しい。行楽地方面へのバスということで、駅から15kmも進めば辺りはすっかり緑に囲まれた山の中の様相だ。

国際興業バス 飯03-2系統の久林停留所で下車
国際興業バス 飯03-2系統の久林停留所で下車

 久林バス停の少し先に、飯03-2系統のメインルートだった県道70号線が県道53号線にぶつかる交差点があり、そこを左に曲がると埼玉県と東京都の都県境を目指せる。

 歩いて20分くらいの距離ならまったり散策しつつ、などと考えて歩いて行くと、目線の先に大きなカーブが見えてきた。しかも明らかに登り坂である。

 あれはもしかして、カーブはカーブでもヘアピンが付く「峠」ってヤツなんじゃないだろうか? 遠巻きからそんな気がしてならない。

山に吸い込まれる
山に吸い込まれる

 ガードレールを介して歩道はシッカリあるので、通行車両を警戒する必要はあまりない。前に進むしかないと歩いていけば、カーブの先にあったのは次のカーブ、やっぱり峠だった。

 本当に1.5km徒歩23分なのだろうか? 実はこの1.5kmという数値、間違いではないが直線距離だったのだ。実際の道のり行程に直すと2.5kmに増える。

 2.5kmのうち1.8kmが登り坂、久林バス停から頂上までの高低差130mである。電車だったら補助機関車がないと登れないほどの勾配だ。

 あのアプリずいぶん体育会系なんだな……翌朝やってくる筋肉痛の予感よろしく、そんなことを考えながら黙々と頂上を目指した。

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