エネルギーを使って動く限り、どんなものでもハラは減る。バスだって走り続けた後には、何らかの食事を摂らせてあげないと働いてくれなくなるわけだが、そんなバス車両が「腹いっぱい」の状態になるまで、どれくらいの時間が要るのだろうか。
文・写真(特記以外):中山修一
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■電気を食べるEVバス
ここ何年かのうち普及促進が本格化し始めたのが、電気を使ってモーターを回し、その力で車両を走らせるEVだ。普通乗用車のみならず、最近は近距離区間の路線バス用としてなら、十分なポテンシャルを秘めた大型バス車両も登場している。
大型車の場合、車体に積んでいるバッテリーの容量が極めて大きい。家庭用電源でも不可能ではないだろうが、基本的には専用の設備を設けて充電を行う。
バッテリーEVバス、いわゆる電気バスへの充電時間はどれくらいかかるのか。ここでは日本でも採用実績のある中国BYDの路線車を例に見てみよう。同社では異なるサイズの車両を何種類かラインナップしている。
25〜31人乗りの小型バスに相当する「J6」には、容量105.6kWhのリチウムイオンバッテリーが搭載されている。カタログスペックによれば、J6の充電時間は120分(2時間)以内と記載されている。
全長10.5mクラスで81人乗りの大型路線車「K8」が搭載しているバッテリーは更に大容量な287kWh。J6のバッテリーの2倍以上の容量があり、充電時間もそのまま2倍以上かと思いきや、3〜3.5時間だ。
今のところ日本には入ってきていない海外の電気バスを引き合いに出してみよう。ドイツのMAN社が製造している「ライオンズ・シティ」シリーズに、全長10.5mクラス80人乗りのEV仕様「10E」がある。
10Eには最大400kWhまでのリチウムイオンバッテリーが搭載できる。バッテリー容量によって充電時間に開きがあるようだが、カタログでは2.5〜5時間となっている。
ちなみに400kWhにどれほどの容量があるか。平均的なスマートフォンを26,600台一度にバスに繋げ、バスをモバイルバッテリーにして充電を始めると、1時間でバス側のバッテリーがなくなる感覚だ。
■水素大好き燃料電池バス
大気汚染につながる有害なガスを発生させない特性から、環境に優しい自動車の駆動方式として注目を集めるのが燃料電池だ。高圧の水素ガスをエネルギー源に用いるが、専用の充填設備を作りガスの充填を行う。
電動モーターの力で車両を走らせる仕組みはEVとほぼ同じ。ただしEVがあらかじめバッテリーに溜め込んだ電気を使うのに対して、燃料電池車は車両に積んだ水素ガスと酸素を化学反応させて電気を作りながら走る。
日本国内で特に有名な燃料電池バスに、トヨタが開発した路線車タイプの「SORA」がある。70名強の乗客を乗せられる、全長10.5mクラスの大型路線車の一種だ。
SORAでは屋根上の前寄りに、容積600Lの水素タンクが10本並べてあり、車両左側前輪の後ろにガス充填口が設けられている。全てのタンクに充填するまでの所要時間は約15分だ。
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