モノの頂点を極める金・ゴールド。色合いすらスペシャリティを持つ存在であるが、その金を外見の飾りとして奢った公共交通機関の乗り物・バスってどれくらいあるのだろうか?
文・写真(特記以外):中山修一
(一例の写真付き記事はバスマガジンWEBまたはベストカーWEBをご覧ください)
■ずっと価値の変わらない物質
「金」は文明が生まれて現在に至るまで、価値がほとんど変わらない物質と言われる。紀元前のローマ時代まで遡っても、金1gあたり今の金額で大体5,000円くらいだったらしい。
その約2000年後の今は投機ブームで高騰しているものの、金本体の部分の価値だけ見れば、感覚的には今も昔も似たようなものだと想像が膨らむ。
希少金属ゆえに高価であるため、富と権力のシンボルに祭り上げられるのも、長い歴史の中で人がどんなに知恵を増やしてきても不変のままだ。
■色まで特別、だけど!?
数ある金属の中でも特別中の特別である金。価値・重さ・感触のみならず、色もまた他にはない独特な景色を放つ。
金の特性を活かした代表的なアイテムといえば宝飾類。まさに金そのものの色合いを楽しむために作られた嗜好品、かつステータスシンボルだ。
それ以外にも、本物の金かどうかは別にして、外見を引き立てるためにゴールドの要素を盛り込むケースは多々ある。
しかしこのゴールド、紛れもないプレミアムカラーではあるものの、扱いが非常に難しいのだ。例えばゴールドカラーを自動車のボディに持ち込もうとすると、「紫」と並んでサジ加減に苦労する色に化けてしまう。
殊に、顔が映り込むくらいのブリンブリンなゴールドともなれば、シルバーでは全くもって満たされず、宇宙に迫るラグジュアリーを自分のクルマに求めたいときくらいしか出番がないと言える。
■「めんどくさい」カラーをあえて使う!
サジ加減に苦労する、もっとザックリ言えば何かと「めんどくさい」カラーである金色。乗用車でも量産品ならシャンパンゴールドくらいが着地点な気がする。
では、より人目につく上に、そこまで手間やコストをかけられない公共交通機関・ここではバスの車両に、そのめんどくさい色が使われる例は全国的に見られるのだろうか。
日本全国を走る全てのバス車両を確認するのは不可能なため、目立つところだけ摘んでチェックしてみると、これがどうして、なくはない感じだ。
まず、車体に金色が使われている、高速バスや貸切バス向けのハイデッカータイプの大型車から見ていくとしよう。
このタイプでは、シートや内装が豪華な高級パックツアー向け貸切車や、ハイグレードシートや個室付きの夜行高速バス車両といったものがよく該当する。
普通の高速バスや観光バスとはちょっと違う、プレミアムな車内設備やサービスを提供する車両が多いところに、ある種の法則性を見出せる。
ただし、ボディが全てゴールドな車両はまずないようで、事業者のロゴの部分を金にしたり、ボディに施された柄の一部をゴールドで表現したりと使い方は控え目、さらにいずれもツヤ消し系だ。
■理由があるから金色です
続いて一般路線バスではどうだろう。まったくないのかと思いきや、ボディに金色を纏って日々走る路線車がちゃんとあった。
代表的な例に挙げられるのが、名古屋の観光向け循環バス「メーグル」の一部の車両と、南海バスが運行している「堺シャトル」だ。
メーグルの場合、通常は白と黄色の2色で、黄色の部分をゴールドに置き換えたもの。堺シャトルは何と全身がゴールド仕上げ(ツヤは抑えているが)になっている。
ではなぜゴールドなのか……メーグルは、名古屋城の象徴・金シャチをイメージしている。堺シャトルは、堺市が昔は貿易港で黄金時代を築いたことを彷彿とさせるからという、どちらもご当地感を演出するためだ。
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