路線バス用の車両には、車を購入するバス会社の好みや用途に応じて、様々なバリエーションが作られる。そんな中「あんまり見たことないな〜」と思わせる、大変個性的なバス車両を見かけることがたまにある。
文・写真:中山修一
(沖縄の個性派バス車両の写真付きフルサイズ版はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)
■沖縄で見かけた個性派バスその1:路線車らしくない設備の路線車
今回は、2024年11月に沖縄本島を訪問中に出会った、パッと見るとノーマルなタイプとはちょっと(だいぶ?)様相の違うバス車両を3台ピックアップしてみた。
1台目は名護のバスターミナルに停めてあった、白地に青のストライプが入った、沖縄バスが保有している路線車。幅2.3m、全長9mクラスの中型路線車に相当するサイズだ。
前と後ろ(中央)に1カ所ずつドアが付いた、いわゆる路線バス向け車両のレイアウトながら、前面は角目4灯顔に加え、通常であれば行先表示器が付いている“おでこ”の部分までフロントガラスが届いている。
そのため前面の行先表示器は車内に外付けする形で吊り下げられている。アナログの巻取式方向幕(観察時は系統番号66番が掲示されていた)であるところも今や懐かしさを感じる。
左右にスライドさせて開くタイプの通称「メトロ窓」が取り付けられ、車内は背もたれの高いハイバックシートが並んでいる。路線バスと観光バスの中間のような全体像を持っているのが個性を強めているポイントか。
はてこの車の正体は……後で車の履歴を探ってみたところ、過去に三菱ふそうが製造していた「エアロミディMK」という車種であった。
型式で言うとKC-MK219J。最初のKCは廃ガス規制の年を示しており、KCは1994〜1998年までが対象。このタイプのエアロミディMKが製造されたのは1995年からなので、1990年代の後半に作られたものであるのは確かだ。
ナンバープレートは3ケタで、地元生え抜きの車ではない模様。どうやら沖縄バスにやってくる以前は、神奈川県の神奈中バスで使われていたらしい。一般的な営業路線向けではなかったようで、観光バス的な意匠が入っているのはそのためだろう。
■個性派バスその2:観光バス顔の中型路線車
2台目もまた名護バスターミナルで休んでいるところに、たまたま出会した車。こちらは白地にレインボー柄が目印の、琉球バス交通が現役で運用中の車両。
同じく全長9メートルクラスで、前に2枚折戸と後ろ(中央)に引き戸の付いた、一般路線バス向けの中型路線車ではあるのだが、こちらも路線車としては一風変わった顔をしている。
大きめの角目ライトが左右に1つずつ付いた2灯で、この車両も通常は行先表示器が収まる“おでこ”のエリアまでフロントガラスがあり、しかも大判1枚ガラスという贅沢なものだ。
顔は明らかに(昔の)観光バスのそれであるが、胴体の部分はごく普通の中型路線車とほぼ同じという、なかなかハイブリッドな逸品である。
さてこの観光バスに見せかけて路線バスな1台の正体は何者か。紐解いてみると、車種は日野自動車の「レインボーHR」であると分かった。
型式は2001年式のKK-HR1JKEE。この時期の通常のレインボーHRは角目4灯なので、レインボーHRとしては変わり種と言えそう。現在3ケタナンバーが付いている、ということは別の場所から引っ越して来た可能性大。
前述のエアロミディMKと同様、やはり首都圏からの移住“車”で、こちらの出所は東京都の東急バスであった。昔運行していた「東急コーチ」と呼ばれる路線の、自由が丘線で使われていたらしい。
東急コーチは、通常の路線バスに対して少し上質な接客設備を売りにしていた。そのため車両にもプレミアム感を出すために、観光バス顔の専用車を導入していた経緯があった。
今も現役続行中である琉球バスの同車が、このような顔つきをしているのは東急コーチ時代の名残というわけだ。
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