姿形が両極端な路線バスと高速バスの車両……その中間を埋める車種もちゃんとあるって知ってた?

姿形が両極端な路線バスと高速バスの車両……その中間を埋める車種もちゃんとあるって知ってた?

 路線バスや高速バスによく使われる大型車は、用途・目的ごとに機能やスタイルがハッキリと分かれている印象が強い。それぞれの運行における特質を考慮した機能を持ち、それに則した姿をしているためだ。でも、マルチに使えるバスも実はある!!

文・写真:中山修一
(多目的に使える? バス車両の写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)

■キャラが違いすぎる路線車と高速車

用途ごとに一目瞭然(?)なバス車両
用途ごとに一目瞭然(?)なバス車両

 主に近場を結ぶ一般路線バスと、高速道路を経由して中〜長距離を移動する高速バス。それぞれの運用に適したバス車両といえば、前者は「路線車」、後者は「高速車」がほぼ専任となっていて、ジャンルの線引きがかなり明確だ。

 ドアが前と中央付近に1カ所ずつ付いていて、最近はワンステップ/ノンステップの、車内前半分の床面が低い位置に設けられ、やや簡易的なシートが取り付けられているタイプが、一般的な路線車のイメージ。

 その路線車を高速バスとして使おうと思ったら可能であるのか……カタログに掲載されているベーシックなモデルに関しては、構造上お客さんを乗せたまま、高速道路を走行するための基準を満たしていないので、特別な認可を得ない限り高速バスへの充当はNG(回送中はOK)だ。

北海道・佐呂間町の町営バス。路線車でも高速車でもない車が使われている!?
北海道・佐呂間町の町営バス。路線車でも高速車でもない車が使われている!?

 一方で、ドアが前1カ所だけにあり、車体の高い位置に客室の床面を設け、その下に荷物用のトランクルームがあり、リクライニング式のハイバックシートが並ぶタイプのバスが、標準的な高速車の大まかなデザイン。

 高速車と呼ぶだけあって、高速道路を巡航するのが得意な設計になっているのは周知の通り。では、高速車を一般路線バスに登用できるかといえば、「大は小を兼ねる」の性質を少なからず持っているため、使えないこともない。

 実際、やや長めの距離を走る高速道路を通らない一般路線に、高速車がレギュラーで充当されている場所もある。とはいえ、15分くらいで終点に着くような短距離路線となれば、本領を発揮できず相当なオーバースペックとなってしまい、単純に勿体無い。

■路線車と高速車の間を取ったバス

 同じバス車両ながらも、路線車と高速車とでは姿形や設備が、砂糖と塩の関係に迫るほど極端に違う。あまりにも裏表・白黒が激しいため、じゃあその中間を埋める性質を持ったバス車両もあるんじゃないの? と思えてくる。

 そんな「間を取ったバス」にどんなものが思い浮かぶか……まず、路線車をベースにした、ドアが前1カ所にあり、シートベルト付きのハイバックシートを取り付けたトップドア車や、ハイバックシート仕様で高速道路の走行に対応したドア2カ所の路線車=ワンロマ車が近い気がする。

 ただし、トップドア車/ワンロマ車ともに、高速道路を走れるタイプは特注品寄りの立ち位置になり、バスメーカーが製造・発売している量産車とはまた違う枠組みに入る印象が強く、間を埋める代表的な存在からは外れるかもしれない。

■現行車に絞るとコレ?

 今回は、2025年2月現在もメーカーカタログに掲載されていて、新車で購入可能な、ワゴン車とマイクロを除くバス専用車両に絞り込み、路線車と高速車の中間地点にいそうな性質を持った車種があるかを吟味。

 その結果、おそらくコレが最も条件に合っているだろうと思えた車種が、いすゞが発売している「ガーラミオ」と、日野の「メルファ」だ。

自治体が所有する自家用登録のメルファ
自治体が所有する自家用登録のメルファ

 いずれも全長9m、幅2.3mの、サイズ的には中型路線車クラスでドアは前に1カ所。車内にシートベルト付きの固定式ハイバックシートもしくはリクライニングシートが並び、標準で高速道路の走行もできる。

 床面の位置もまた、路線車と高速車のちょうど中間くらいの高さで、「ミドルデッカー車」と呼ばれるジャンルだ。それでも床面の下にはトランクルームがある。全体的な構成はやや高速車寄りと言える。

 価格に注目した場合およそ2,000万円前後。中型路線車の価格帯と似通っている。高速車の新車価格が4,500万円くらいなのを考えると、コスト的に路線車向けとしての使い勝手も悪くなさそうだ。

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