主要国ではもっとも「バス運賃が安い国」といわれる日本であるが、それでも海外で見聞を高めることは必要である。日本は「安い」だけでなく「発想が貧困」になっているのかもしれない。
(記事の内容は、2024年9月現在のものです)
執筆・写真/谷川一巳
※2024年9月発売《バスマガジンvol.126》『バスにまつわる愉快だけどマジな話』より
■ニュージーランドでも感じる物価高だが……
ニュージーランド最大都市オークランドの移動手段は路線バスが便利で、多くがダブルデッカーで運転されるので、最前部にでも乗車すれば簡単に市内観光ができるというものだ。
しかし、その運賃の初乗りは日本円で500円近くになり、日本の倍以上という感覚になる。
筆者が前回ニュージーランド旅行をしたのは20年以上前になるが、そのときの為替レートは1ニュージーランドドル54円だったが、現在は98円と倍近くになっている。現地の物価が変わったのではなく日本が安くなったのである。
明らかに日本の経済政策の失敗が見えてくるが、海外を自分の足で歩いてみると、日本に欠落している部分も見えてくる。
それが、日本には「合理性がない」という部分だ。
実は路線バスが初乗り500円の国であっても、筆者は公共交通を使っての旅がルンルン気分であった。かといって乗り放題の1日券を利用したわけでもない。ちなみに1日券のような割引切符も販売されていない。
■ICカードの使い方が進化していない日本
オークランドの路線バスは「ホップカード」というICカードで乗車し、その都度利用した運賃が引かれるという部分は日本と同じである。
しかし、1日の引き落とし額に上限があり、20ニュージーランドドル(2000円弱)に達すると、以降はどれだけ乗っても無料というシステムなのである。
さらに、路線バスだけでなく近郊鉄道や定期船も含めての話なので、観光客が公共交通利用で観光すれば、おおよそ「午後の交通費はタダ」といってもいいくらいなのである。
つまり、初乗りは500円であっても、1日の交通費は2000円を超えないという仕組みである。
これなら「1日券買って元が取れるかな~」「こんなに乗るなら1日券を買っておけばよかった」ということにならず、公平であるし安心である。
別料金になるのは観光バスや空港バスだけになるほか、鉄道と路線バスを乗り継いででも空港へも行くことができる。
カードに日本円で約2000円をチャージしておけば、運賃不足になる心配がないという点も見逃せないメリットである。
実はこのようなシステムはヨーロッパなどでも多く、都市によっては1日の上限額、さらに1週間の上限額や、平日と週末で上限額が異なるなど、ICカードの利点を存分に発揮させている。
対する日本はというと、ICカードの利点が「小銭が要らない」だけ。現在の日本は安いだけでなく、かなり遅れてしまったと感じる。
【画像ギャラリー】初乗り500円……しかし2000円を超えるとあとは無料!? ICカードの利便性フル活用のニュージーランドのバス(10枚)画像ギャラリー
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