バスを営業運転しようとする場合は、当然ながら大型二種免許が必要だ。この免許は世間では最高峰の免許という認識になっている。ゆえに「運転が上手い」「法令順守の模範運転」と一般的には思われているようだ。それでも同じ二種免許を持って運転するタクシーはバスとの相対関係においてもっとも事故の多い相手だとも言われる。どうしてそうなるのかを考察してみた。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■そもそも二種免許とは?
大型に限らず第二種免許とは、道路交通法では「旅客自動車であるものを旅客自動車運送事業に係る旅客を運送する目的で運転しようとする者」が必要な免許としか定義されていない。その中で自動車の大きさにより大型や中型や普通と細分化されているだけだ。
第一種免許と第二種免許との差異は特に規定されておらず、運転できる自動車の状態(有償で旅客運送する状態の自動車)のより必要か不要かが分かれているだけだ。しかしご存じの通り、技能試験や学科試験はもちろん、適性試験に至るまで第一種免許よりも厳しい合格基準になっている。
運賃を収受して人を乗せて走る、換言すれば旅客の命を預かる免許だから当然といえば当然だが、なにもドライビングテクニックが要求されているわけではない。通常の運転において特にバスではアクセルワークやブレーキング、あるいはハンドル操作は同じような大きさとトラックとは違い気を遣わなくてはならない程度だ。
■実際の道路では?
では、何を期待されているのかというと、これから先は実際にバス運転士をしている記者のオピニオンであることはあらかじめお断りしておくが、周囲の交通への配慮と表現できるのではないかと考える。
もっとわかりやすく言うと、周囲の自動車が不用意にブレーキを踏まなければならない、あるいは急ハンドルを切らなければならないような動きをする運転者は二種免許に値しないと考える。
バスは発進も遅いし、右左折時は大回りになり安全確認のために極端に速度が落ちあるいは停止し、後ろにいる自動車には迷惑がかかるが、車内はもちろんのこと、歩行者や自転車等周囲も含めた安全運行のためにはご理解いただきたい。しかし、周りの自動車に急ブレーキを踏ませたり急ハンドルを切らせたりするような運転はほとんどないはずだ。
■よく見るタクシーの運転
同じ二種免許を持つタクシーは、バス運転士が最も警戒対象とする自動車である。どこにいるのかわからない、またはどこで停めてくれと言われるかわからない状態で運転しているのだから、急に左に寄って止まることがあるのは理解している。
しかし、交差点の中で停止したり、乗ったお客さんの行先が逆方向であり、左車線からいきなり反対車線に転回する等はバスに限らず周囲の自動車に確実に急ブレーキを踏ませる。自分は水揚げのために、お客さんの指示によりそれでいいのかもしれないが、それがために事故を起こしてしまえば元も子もない。
そういう動きをするタクシーが実際に多いのだ。バスを抜いていくのは遅いので構わないし、後ろからタクシーが迫っていればバス停からを出るのを待つ。しかし出ようとしているのに強引にバスの前に割り込んでくれば、バスは発車直後にブレーキを踏まなくてはならない。これがどれだけ危険なことなのかを少しは理解してほしいのだ。





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