ONOENSTAR PARTY BUSとは何者だ!? その正体は11m級のボンネットバスだった!!

ONOENSTAR PARTY BUSとは何者だ!? その正体は11m級のボンネットバスだった!!

 巷では電気バスが百花繚乱状態で走っている。このコーナーでも様々なオノエンスターのバスに試乗、紹介してきたが、今回、久々の内燃機車が登場することになった。しかも11mのボンネットバスだ。

 そのアメリカンな外観から、特殊なオーラがピリピリと漂ってくるが、そこは超実力派のオノエンスター。その実力に疑いの余地は無い。しかし知れば知るほどその“面白さ”が見えてくる。こんなバス、ほかじゃちょっと見られないぞ!!

(記事の内容は、2025年3月現在のものです)
執筆/近田 茂 写真/バスマガジン編集部
取材協力/ONO ENGINEERING
※2025年3月発売《バスマガジンvol.128》『バス作りの新勢力から』より

■国内唯一の存在であるこのバス……豪華なインテリアに驚愕

ベンツの米トラックブランド、フレイトライナーの車両をベースとしたボンネットバス。長いオーバーハングもそれほど負担になっていない
ベンツの米トラックブランド、フレイトライナーの車両をベースとしたボンネットバス。長いオーバーハングもそれほど負担になっていない

 こんなバスは見たことがない。全体的フォルムは、アメリカで活躍するボンネット型の黄色いスクールバスを思わせたが、ホワイトとシルバーのツートーンにスモークガラスの出で立ちは、タダ者ではない雰囲気が漂っている。

 サイドにはONOENSTARとLIMOUSINEの文字。さらにドアとオーバーヘッドの前面、そして後部には「PARTY BUS」と明記されていた。果たしてこの車両の正体は如何に。

 大きくスイングする乗降扉が前方に開くと、贅を極めた豪華なインテリアに迎えられる。一瞬にして異次元の世界にワープできるほどそのキャビンには驚愕させられてしまう。

 が、まずは車両について簡単に解説しておこう。アメリカのトラックメーカーであるフレイトライナー製。同社はダイムラートラックの傘下に属し、三菱ふそうともグループを成す存在。大型車では「カスケディア」が有名だ。

 これは同社の中型クラスを担うM2 106がベース。1991年から活躍したFシリーズの後継モデルとして2003年に登場。様々なユーザーニーズに合わせられるよう、多彩なモデル展開に対応しつつ熟成が重ねられてきた。スクールバスや消防車への活用例でも良く知られている。

アメリカ製なのでハンドルは左。バスよりは乗用車ライクなムードの運転台だ
アメリカ製なのでハンドルは左。バスよりは乗用車ライクなムードの運転台だ

 今回の試乗車は、4×2の長尺仕様がベースで、全長は約11m。ホイールベースは7mに迫り、写真からもわかる通りリヤオーバーハングは3.5mほどもある。

 最新モデルの“プラス”ではデトロイト製のエンジン搭載が主流となっているが、2017年モデルの試乗車はカミンズ製の6.7L直列6気筒ディーゼルエンジンを搭載。アイシン製の7ポジション5速ATがマッチされている。

足まわりは245/70R-19.5インチサイズのタイヤ(前2本後4本)を履き、フロントサスペンションはリーフリジッド、リアは左右2本のトレーリングアームでホーシングを支持しエアベローズを介す方式。

 運転台を含む基本車両は前述の通りフレイトライナーのM2がベースだが、ラダーフレーム後部にアメリカン・コーチビルダーにカスタム制作された独自ボディを架装した特装車なのである。

■豪華な移動空間は実用的でもあった…その用途は無限かも

全長11mのボンネットバスながら、駐車車両が続く路地も小回り性能を発揮してスーッと抜けていく
全長11mのボンネットバスながら、駐車車両が続く路地も小回り性能を発揮してスーッと抜けていく

 さて乗降口が開くと電動格納される補助ステップも含めて5段もの階段が現れる。やや照度を落とした室内にはLEDを多用したイルミネーションが輝き、ゴージャスな世界に包まれる。その様子は画像ギャラリーの写真をご覧頂きたい。

 リムジンといえば2年程前に紙のバスバガジンで記事掲載したフォード・ストレッチリムジンのJ型シートが思い出されるが、なんとこのパーティバスはU型シートを採用。2点式ながら27名分のシートベルトもちゃんと装備されている。

 コーナーキャビネットやシートバッククッションを外した内側にはシャンパングラスやボトルがギッシリ。ミュージックビデオ(DVD)を流せるモニターは全部で5台。シート下は収納に活用できる。そして何より決定的なのは、立ち上がって室内を移動できる広い空間設計が魅力的なのである。

 そして運転席につくと各部のサイズや操作性がいかにもアメリカン!! 顕著なのはインパネにあるプルスイッチ式のパーキングブレーキで引くのも押す(解除)のも操作にはかなりの力が必要な点。ただ慣れるとキチンと確実な操作が強いられるという意味で安全性が担保される感覚になってくる。

 エンジンは2600回転あたりまで常にトルクが太く柔軟だ。発進時はトルコンも生きて力強く扱いやすかった。エンジン位置が運転席に近いのでそれなりの騒音だが、うるさいと思う程ではない。むしろ後部キャビンは比較的静か。

 サスペンションは貨物車的な振動が伝わって来たが、乗客が増えればそれなりにちょうど良いフットワークが期待できるのかもしれない。気にすべきなのはリヤオーバーハングの左右蹴り出しと浅いデパーチャーアングルに要注意。

 それにしてもこのパーティバスは国内で唯一の存在である。オノエンジニアリングは既報の超ストレッチリムジンを2003年に導入して、営業ナンバーを取得して事業展開したパイオニアである。

 この車両の今後については現在未定。しかし小野社長は「不景気な時代だからこそ特別な空間と時間を楽しんで欲しい」と思案中。イベントや会議スペース、撮影スタジオやそのほかの利用価値も侮れないだろう。今後の事業展開に期待が膨らんでくるのである。

【画像ギャラリー】レッツ・パ〜リィナイ!! オノエンスターの「パーティバス」は走り続ける限りエンドレスパーティ!!(19枚)画像ギャラリー

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