コミュニティバスといえば地方でバス事業者が採算が取れなくて廃止した路線や、公共交通機関がなく高齢者向けに自治体が主体となり運行しているというイメージがあるが、趣は異なるものの東京都区部(23都区)でも多くのコミュニティバスが走っている。今回の乗りバスレポートはバスヲタとはちょっと違う方向の人々の中で話題になっているお店をコミュニティバスで訪ねた。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■渋谷は間違いなく谷だった!!
多くの人が集まる渋谷駅は、そこからどの方向に行くにも坂を登らなくてはならない。しいて言えば山手線沿いに明治通りを新宿・池袋方向に歩く方向だけが坂道ではない程度だ。
まだ土木技術がそれほど発達していなかった時代に浅く掘って建設した銀座線が各線の渋谷駅の中で最も高い位置(ビルの3階)に出てきていることからも渋谷が谷の底であることがわかる。
よって渋谷区のどこに行くのにも坂なので住民は大変だ。そこで渋谷区ではずいぶん前からコミュニティバスを運行している。
大型バスはもちろん、中型バスでも入れないような住宅街の道をつないで路線を敷いており、活躍する車両はもちろん日野ポンチョだ。路線によっては最小クラスのショートボディ車が投入される。
渋谷区コミュニティバスの愛称は「ハチ公バス」だ。現在は4路線を2社に委託して運行している。いずれも渋谷区役所または渋谷駅を起点に一筆書きの循環路線になっている。鉄道では隣の駅にバスで行こうと思っても一筆書きなので1時間くらいかかることもある。
しかし坂道を気にしなくてよく、運賃も100円均一で行先によっては乗り継ぎ券を発行していてショートカットも可能なので気軽に乗る人も多いようだ。
■その名も「夕やけこやけルート」
今回乗車したのは「夕やけこやけルート」との愛称がついた路線で、運行間隔は毎時2から3本程度。渋谷駅から乗車すると、恵比寿や代官山を経由して渋谷駅・渋谷区役所に戻る循環線だ。
恵比寿は渋谷からJRで次の駅、代官山は東急東横線で次の駅だ。しかしハチ公バスで行くとたっぷりと時間がかかる。
目的地とは明後日の方向に曲がったかと思うと、強烈な坂をポンチョが登っていく。幹線道路に出たかと思うと、すぐに脇道にそれてしまう。その繰り返しで全体として循環する路線だ。急な坂道を見るとバスに乗ってよかったと思う瞬間である。
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