■最後の2周回は地獄の大幅遅れ
遅れている便はさらに遅れ、後ろを走る定刻の便までもそれに引きずられて遅れていく。同僚運転士は無線で「私の便がすぐ後ろにいますので、もし立席が出るようでしたら後ろの便に回るように案内してください」と親切に言ってくれるので、積み残しの恐れが出てきた停留所ではあらかじめ後ろを走るダイヤの運転士に無線を入れて、その旨を通知しておくことにより後続車も心の準備ができるのだ。
そうして同じルートを走る運転士同士が協力しながら、乗客を分散させてなるべく乗降に時間がかからないように定刻便の運転士が仕向けてくれるのだが、残念ながら焼け石に水なのが実情だ。それでも連絡を取り合い、乗客に情報を伝え案内することにより混乱だけは避けられ積み残しを出さずに運行できたのは同僚運転士のおかげだ。
そのようなやり取りをしながら後ろの便に追い付かれ、気が付けばバスが団子になっている状態で最後の便は相当の遅れで次の運転士に引き渡した。こうなると実際にそうしたことはなく対処してくれるのだが、仮に渡した運転士が休憩を全部削ったとしても次の仕業に間に合わないという事態になる。
こういう時には無線で営業所に連絡して運行管理者の指示を仰ぐ。この日は運転整理のテクニックとして「差し込み」が行われた。これは営業所から予備の車両と運転士を出して、遅延している便が田町駅に到着して折り返す前に、所定のダイヤで臨時に予備車で折り返し便を出発させ遅延をなくす手法だ。1台で運行するところを2台を使用して遅延を吸収させてしまう手法だ。
こうすることにより乗客には遅れがなくなるし、路線バスとして決められた便数はキチンと走らせることができるし、遅延便の運転士はあとのことを心配せず心理的に重圧から解放されるというメリットがある。
デメリットは予備の車両と運転士というリソースを一時的に消費してしまうことだ。しかし、この日のように通行止めや事故渋滞があったわけではなく、なぜか全体が自然に大幅遅延してしまっているということはあることなので不思議だ。
結果論的な要因としては、遅延便には遅延した数分間の乗客もバス停に滞留するので乗降に時間がかかり、次のバス停ではさらに広がった遅延の数分間分の乗客がやってくるという悪循環が積み重なった結果なのだろう。もしかしたらトップバッターであった記者が最初に26分遅延させたのが原因で夕方まで積み重なったのかもしれないし、そもそも当日がそのような状況で全体的に遅れていただけかもしれない。
鉄道では運転整理として後続の列車をわざと遅延して発車させることで列車の間隔を一定に保つ手法が取られる。しかしバスではそれはできないし、勝手に間引きして運休させるわけにはいかない。よってこのようなケースでは臨時に定刻ダイヤに乗せた便を出すという、バスがタスキのような駅伝の繰り上げスタートに似た手法が取られる。
■やはりクレームが来たか!
ちなみにフジエクスプレスでは遅延に関して運転士に一切のお咎めはない。バスは遅延するものだということは会社が最もよく理解しているからだ。とはいえ、矢面に立たされるのは運転士なので、運転士の誇りとプライドで定時運行を心がけている。
この日もさすがに20分以上遅れたので数名の乗客から文句を言われた。概ねクレームの内容は遅延に関してである。クソ暑い中で何十分もバスを待っていたのであるから、お怒りはいちいちごもっともである。しかし運転士に文句を言っても遅延が広がるだけなので、お気持ちは理解するが遅延に関するクレームや問い合わせはWEBのフォームで申告していただきたい。
文句を言われた運転士の心理的な影響は決して小さくなく、それがために運転の継続が難しく、当該便の運行を中止せざるを得なくなることすら起きうるのだ。そうなると代わりの運転士と車両を手配するか後続の便に振り替えるかになるので、文句を言った遅延どころではないくらいに到着が遅れることになるのは覚えておいていただければ幸いである。
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