バスの先頭や側面で行先を表示するのが方向幕。最近LED化が進んでいて、ファンにとっては寂しい限りだ。「方向幕の世界」では、昔ながらのモーターでスクロールする様々な地方の方向幕をご紹介する。
東京都内を走るバス事業者の方向幕を見ていると、たびたび登場するのがオージ製の方向幕表示機。今回はオージ製方向幕について仕様と、使用事業者をご紹介する。
文/写真:高木純一(バスマガジンvol.83より)
オージ製方向幕表示機には大まかにいうと3種類ある
「オージ」は名前でお分かりの方も多いかと思うが東京都北区にある「王子」に本社を構えるバス機器のメーカーで、方向幕表示機やLED表示機、メモリーブザー(降車ボタン)、座席の取っ手、ドアチャイムなどを製作している、レシップに続くバス機器総合メーカーのひとつである。
現在はLED表示機とメモリーブザーで全国的に名前が知られているが、方向幕表示機は全国的には採用例がそれほど多くはなく、東京近県のバス事業者でシェアの半分以上を占めていたと思われる。ちなみに方向幕のフィルムの製造はしていない。
オージ製の方向幕表示機は他社の表示機とは違う部分があり、表示軸棒にガードがついていて、表示軸棒が芯棒(幕を巻き取る軸棒)と連動して回転するのが最大の特徴であるが、バスについている時は全く見えないため知る人ぞ知る特徴だ。またほぼ全機種を通じて幕は内巻き(表示面を内側に巻き取る)になっているのも特徴。
代表的な機種として「EM75型」「EM82型」「EM92型」の3種類があり、型式以下に続く形番は多数の種類があるが、大まかにはこの3種類がオージ製方向幕表示機の形式となる。
EM75型は表示面右上に開けられた穴にマイクロスイッチにつながっている金属棒を落として反応させる「穴検知式」を採用している。また側板は軽量化のため肉抜き処理がなされている。
EM82型はEM75型のマイナーチェンジ盤で、検知方式が幕に貼られた銀テープを検知する「箔式」になった。これはマイクロスイッチによる検知では表示機の奥行きの小型化(高速バスの表示機はスペースの関係で薄型の表示機でないと設置できない)が不可能なためと、幕は日光の日差し等で数年経つと劣化し穴検知式だと検知部分である金属棒が幕と常に接触しているためその接触面の筋から劣化した部分が破れる、という事象が発生するためその防御策で採用する事業者がある。
ただ、EM75型も同時生産していたためあまり普及することが無く、奥行きがとれない高速バスや路線バスでは川崎鶴見臨港バス、川崎市交通局しか採用事例が無いのであまり知られていない形式でもある。