超当たり前だった網棚付の路線バス! なぜ廃れてしまった!?

超当たり前だった網棚付の路線バス! なぜ廃れてしまった!?

 荷物を乗せる「網棚」。元々は網がかけられていたので網棚と呼ばれるようになったのが定説であった。現在はステンレスパイプや樹脂などで作られているため、「荷物棚」や「荷棚」のほうが正確な表現と言えるが、呼び名としての網棚は今も残っている。電車にとって網棚は座席とセットのようなもので、網棚がない電車のほうが珍しいと言える。

 一方の路線バスに目を向けてみると……荷物は膝の上や床に置くもので、網棚に乗せる発想はあまりなく、実際路線バス=網棚なしが普通に思える。では反対に、網棚が付いている路線バスも存在するのだろうか?

文・写真:中山修一

【画像ギャラリー】荷物は膝か床の上!だけれども…… 網棚付きの路線バスってあるの?(6枚)画像ギャラリー

昔は一般的だった? 網棚付き路線バス

路線バスの天井両肩は広告スペースの印象が強く、網棚を連想することは少ないはず。
路線バスの天井両肩は広告スペースの印象が強く、網棚を連想することは少ないはず。

 過去に遡ると、戦後に作られたボンネットバスの場合、網棚はそれほど珍しい設備ではなかったようで、バスの形が箱型でリアエンジンに変わって暫くの間も網棚は踏襲されていた。

 その後年月を経て、標準的な装備からは外されていくものの、2000年代前半頃まで網棚付きの路線バスが作られている。

 現在、首都圏などの大都市で使われている路線バスでは、車両が更新されているのもあって網棚を見る機会はほとんどない。翻って郊外を走る路線バスはどうかと言えば、これが皆無というわけでもなく、各地で網棚付きがチラホラ見られる。

 網棚付き路線バスのうち、実際に現地で確認できたのは、北海道北見バスと伊予鉄南予バスの2社(もっとあるハズ!)。いずれも1990〜2000年代初め頃に製造された車両で、通しでの乗車時間が1時間を超える比較的長い路線に使われていた。

一直線に棚が続く、北海道北見バスの三菱ふそうエアロスター(1990年代後半製造)。
一直線に棚が続く、北海道北見バスの三菱ふそうエアロスター(1990年代後半製造)。

網棚がなくなったワケとは一体!?

 昔は割と普通だった路線バスの網棚。最近の車両に付いていないのは何故だろうか。その理由をいくつか挙げてみると…

・利用者が少ない
・立席客の邪魔になる
・広告の掲示場所が減る
・クーラーの冷却効率が下がる
・忘れ物が多くなる

…といったところだろう。更に、網棚がバリアフリーの基準に合わなくなったのも要因と言えそうだ。

 乗せた荷物がカーブ等で落下するリスクも考えられるが、路線バスの速度なら、よほど手前に不安定な物を置かない限り、振られて落ちる確率は低いかもしれない。

 利便性より物珍しさが優ってしまう、今や残り少ない路線バスの設備・網棚。古めの車両がやってきて、それに乗り車内を見上げて「あ、付いてる」と気づけば、目的地までが楽しくなる!?

【画像ギャラリー】荷物は膝か床の上!だけれども…… 網棚付きの路線バスってあるの?(6枚)画像ギャラリー

最新号

【9月20日発売】巻頭特集は「東急バス」!! ほか楽しいバスの企画満載の バスマガジン126号!!

【9月20日発売】巻頭特集は「東急バス」!! ほか楽しいバスの企画満載の バスマガジン126号!!

バスマガジン Vol.126は9月20日発売!! 美しい写真と詳細なデータ、大胆な企画と緻密な取材で読者を魅了してやまないバス好きのためのバス総合情報誌だ!!  巻頭の[おじゃまします! バス会社潜入レポート]では、東急バスを特集。東京都から神奈川県において都市部から住宅地、田園地帯まで広いエリアを綿密なネットワークを展開、さらに高速路線バスやエアポートリムジンも大活躍。地域住民の足としてはもちろん、首都圏の動脈ともいえる重要な存在だ。  続く特集は、ついに日本に上陸しさらに種子島での運行が決まった、ヒョンデの電気バス[ELEC CITY TOWN]の試乗インプレッション。日本におけるヒョンデの本拠地である横浜・みなとみらい地区で、徹底的にその性能を確認した。  バスの周辺パーツやシステムを紹介する[バス用品探訪]では、なんと排出ガスからほぼ煤が出なくなるというエンジンオイルを紹介。この画期的な商品「出光アッシュフリー」について、出光で話わ聞いてきた。  そして後半カラー特集では、本誌で毎号、その動向、性能を追跡取材してきた「カルサンe-JEST」。このトルコ製小型電気バスがついに、運行デビューを果たした。その地は長野県伊那市と栃木県那須塩原市。今後の活躍が期待される出発式を紹介する。