多くの路線バスには、取っ手のようなものが車内外ともに沢山取り付けられているが、これは一体、何のために用意されているのだろうか。
文・写真:中山修一
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■乗客の安全に直結? 車内にある大量の取っ手
路線バスで最も強い主張を感じるのが、車内の座席の取っ手だ。最前列・最後列とバリアフリーエリアの一部の席を除き、背もたれの肩の部分に1つと、同じく背もたれ裏側に、1人がけなら1つ、2人がけなら2つ横に並べてネジで取り付けられている。
どの取っ手にも正確な使い方というのは特になさそうだが、座席肩と背もたれ裏側の取っ手は、特に座席を利用する人にとって便利なばかりでなく、安全のために不可欠な設備と言える。
座席に座る/立つ際に取っ手を掴めばバランスが取りやすく、着席中も適宜掴めば急な横揺れなどに対処できる。肩の取っ手に関しては、走行中に立ち席客が転倒しないよう、吊り革や掴み棒と組み合わせて使う場合もある。
どんな車種にも座席に取っ手が付いているわけではないものの、最近の路線車では三菱ふそうエアロスターの標準仕様が採用している。いすゞと日野の場合、背もたれの上に掴み棒を横向きに渡して、取っ手と同じ機能を持たせている。
■何で車外に取っ手が?
次に車両を外から眺めてみると、車内のものと似た取っ手らしき、黒い棒状の部品が前と後ろに見受けられる。バス車内の取っ手に合理性を感じるのはともかく、車外となれば用途に些かナゾが付きまとう。
乗客が使うことはまずないため、普通は気に留めすらしないのが当たり前かもしれないが、実はこの車外の取っ手群、車両のメンテナンス時に抜群の効果を発揮する。
最近の中型・大型路線車では、メーカーを問わず前面フロントガラス下のワイパー付け根の近くに、取っ手が2つ横に並んで取り付けられている。普通乗用車のドアのように手前に引っ張るとどこかが開く……のではなく、純粋に掴むための取っ手だ。
路線車は背が高いため、フロントガラスの拭き掃除をするには、車体によじ登らないと上まで届かない。バス車両のバンパーには人が乗っても壊れないくらいの強度があり、よく見ると一部が滑り止め付きのステップになっている。
しかしバンパーのステップ部分にはあまり奥行きがなく、乗ると爪先立ちになる。何かに掴まらないとバランスが取れず、後ろに倒れてしまう。そんなときに前述の取っ手を片手で掴んでおけば、倒れることなく窓拭きができるわけだ。
ワイパー付け根のほか行先表示器の下あたりに取っ手を増設して、よりメンテ作業がしやすい環境を確保している車両も、事業者によっては結構な頻度で見られる。
メンテナンス作業用の黒い取っ手を増設するもう一方の位置が、車体後部のリアガラスの下だ。ただし構造の関係か、行先表示器の下またはリアガラス下に取っ手を設けた、三菱ふそうの大型路線車はあまりないようだ。
後部バンパーの上あたりにも取っ手が付いている。これはエンジンルームの点検蓋に直付けしてあることから、蓋を開く際のハンドルだろう。三菱車は黒か銀色の取っ手が中央に1つ、いすゞと日野車は黒の取っ手が左右に2つの配置となっている。
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