バスが車庫に戻る時などに表示される「回送」。目的だけ書かれたシンプルな回送表示だけだったのが、いつの間にか表現の幅が生まれ、今や結構おしゃべりになってきている。
文・写真:中山修一
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■誰が始めた? すみません系の回送
必要以上のことが書いてある回送表示で特に有名な表現といえば、やはり「すみません回送中です」や「すみません回送車です」のような、すみません系がダントツだ。
あまりにもバスの腰が低い、と、サブカル系ゴシップの定番ネタになったものだが、誰がどこで使い始めたのか……明確な記録は残っていないものの、2000年頃に導入した兵庫県の神姫バスが特に早いようだ。
イチ地域で始めた平身低頭な回送表示も日に日に勢力を拡大、今や沖縄から北海道に至るまで、日本全国あちこちで客を乗せないバスが日々どこかの誰かに向けて謝り続けている。
この系列の回送表示では「すみません」が最もフォーマルなスタイルだ。そこからだんだん枝分かれして、気付けばそのバスが走る地域の方言で「すみません」を表すといった、ウイットに富む要素を盛り込んだ事業者も出てきた。
ほかにも、すみませんでは済まないとばかりに、「申し訳ございません」とまで言ってしまう、いえいえそこまでせず頭を上げてくださいと、こちらの方が恐縮してしまうほど丁寧なパターンまで登場している。
■LEDだからこそ成せる技
回送表示がバラエティ豊かになってきたのも、行先表示器が巻き取り幕からLED方式へと世代交代したところが大きい。もちろん旧来の幕でも可能であるが、物理的に幕を製作する必要があり、コストがかかってしまう。
バスのLED表示器は、ファミコンやPCエンジンなど昔のゲーム機と同様、ドットで文字記号を表現する仕組みだ。ソフトウェアの部分を変えるだけで、字でも絵でも何だって表示できてしまうので、表現の自由度は格段にアップしている。
そんな柔軟性の高いLED表示器の特性を利用して、すみません系以外の言葉を回送表示に添えたバスを、ちょくちょく見かけるようになってきた。
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