バスの方向幕でもっとも多く見かける「回送」。鉄道でも見かけるがバスの回送表示は駅や車庫でも見かける機会は非常に多い。鉄道とは違い、バスの回送表示は事業者によって多種多様であったりする。今回は各社のバラエティに富んだ回送表示をご紹介する。
文・写真/高木純一(バスマガジンvol.80より)
すべてのバスに必ずあるのが「回送」を意味する表示
バスの回送表示は普通の行先コマと色が異なるケースがある。以前にも紹介したが、行先の文字色は黒色だが回送は青(千葉内陸バスなど)または緑色(三重交通など)になっている事業者がある。
これは行先コマの経由地の色を回送表示の色として使用している例が多い。中には回送表示も行先もすべて黒または青色のままという事業者もあるが、その場合は経由地色もすべて同色しか使っていない事業者(尼崎市交通局など)に見られる。
ベタ印刷の通称「カラー幕」と呼ばれる色幕を使用している事業者には上記の特徴がほとんどなく、行先コマも回送表示も同じ色のベタ印刷コマになっているものがほとんどである。ただ、方面別にカラー幕を採用している西東京バスや北陸鉄道バスなどは、カラー幕を採用する前の回送表示のまま、白幕の回送で残っている場合がほとんどである。
その逆で大阪市交通局や和歌山バスなどは行先コマが白幕なのに対し、回送表示などの特殊表示を反転(ベタ印刷)にしてわかりやすくしている例もある。
中でも伊丹市交通局は行先コマが青ベタなのに対して回送や貸切表示をオレンジベタにして遠くからでも明らかに営業車ではないことが一目でわかるくらいの差別化をしていたのは特筆に値する。
「回送」の意味でもあり「回送」ではない表示の場合もある!?
回送表示には「回送」の他に一部の事業者では「回送車」と書かれていることがある。主に関東地区に多く、東京都交通局をはじめ横浜市交通局・川崎市交通局も回送車表示であり、関東地区の公営交通はすべて回送車表示である。
また民間事業者でも関東バスや京成バスも回送車表示であるが、東急バスや国際興業バスは以前は回送車表示であったものの回送表示に変わってしまった。関東地区以外では京都市交通局、八戸市交通部、函館市交通局でも見ることができた。
ほかの特殊な例として、京浜急行電鉄バスでは一時、回送表示がなく「京浜急行」表示を使用していた。路線バスではない、という意味で社名表示を幅広く活用した例である。
似たような例として北海道地区限定で「非営業」という表示がある。大阪市交通局では「整備回送」というコマがあり、車検時など制服を着た運転士以外が運転する場合に表示をする。
また何も書かれていない「白幕」も、ダイヤ外回送(研修など)で使用することがあり同社独特の表示でもある。高速バスではダイヤ上、高速道路経由で回送する場合に「回送(路線バス)」という表示をする事業者がある。これは高速道路料金を路線登録の料金で利用するためである。
最近では「すみません回送中です」という表示が出現したが、ほとんどがLED表示機でしか見ることができないが、宮崎交通や青森県の南部バスでは方向幕車でも「すみません回送中です」の表示を見ることができる。
回送にローマ字がつく場合は「Out of service」または「Not in service」と書かれている場合が多いが、中には、臨港バスでは「Send Back」と、長電バスと千曲バスは「To car barn」、本四海峡バスは鉄道でも見られた「Dead head」と書かれていた。全バス共通の回送表示でも各社によってバラエティに富んでいるのがお分かりいただけただろうか。