現在大阪・夢洲(ゆめしま)で大阪・関西万博が開催中だ。その様子はメディアやSNSでも連日話題になっており、既にご存知のことだろう。その前に開催された国際博覧会で2005年に開催された「愛・地球博」の輸送について引き続き振り返りたい。
文/写真:東出真
編集:古川智規(バスマガジン編集部)
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■当時の建造物とその後
愛・地球博は今から20年前の2005年、平成17年に愛知県の愛知青少年公園(現:愛・地球博記念公園)の敷地などで開催された。正式名称は「2005年日本国際博覧会」であり、愛称として「愛・地球博」と呼ばれた。場所は長久手会場と瀬戸会場の2つで行われ、その2つはバスやロープウェーで行き来することができた。
3月25日から9月25日まで185日間の会期中に約2205万人の来場者を記録し、博覧会のテーマ「自然の叡智」として人と自然がいかに共存していくかとして公園の一部を会場の一部としてそのまま展示し、環境に配慮された建物の設置などが行われた。会場内を1周するグローバルループや体験施設「サツキとメイの家」など人気となり会期後半には連日入場口には多くの来場者が列を作った。
現在は愛・地球博記念公園として整備され、グローバルループの一部が残され、今でも当時を振り返ることができるほか、サツキとメイの家もそのまま残ったほかジブリパークと呼ばれるエリアが新設され、ジブリ作品の様々な体験ができる施設や作品に登場する建物などが再現されている。
■IMTSという先端システムの知見が現在に生きている?
愛・地球博に向かうアクセスについて、前回は名古屋駅から直接長久手会場のバスターミナルを結んだシャトルバスについてお届けしたが、今回はそれ以外の会場や会場間を運行した交通手段についてお届けしたい。
まずは会場内の移動手段についてだ。大阪・関西万博では会場の外周を走行するeMoverについては以前に記事で伝えした。走行する車両は全てEVバスで一部車両は自動運転、また道路に埋められた送電コイルから走行中に給電することができるなど最新技術が取り入れられているが、愛・地球博ではIMTSという車両が来場者を運んでいた。
このIMTSはIntelligent Multimode Transit System(インテリジェント・マルチモード・トランジット・システム)の略で新しい交通システムとして開発された。基本は3台による運行で、それぞれが物理的な連結はせずに電子的に編成を組みながら、自動運転による隊列走行で運転された。また1台に運転手が乗り込んで通常のバスと同様に有人運転で隊列から離れて分岐し、合流するというデュアルモード走行を組み合わせた自動運転でフレキシブルな運行が実施された。
路線は北ゲート、西ゲート、EXPOドームの3つの駅と、西ゲート駅から分岐したIMTSメッセ前バス停を結ぶルートがあった。自動運転はこのルート上がメインで道路上にあるマーカーを読み取り走行していた。ただ大阪・関西万博のeMoverと違い、専用道路と専用車両なので自動運転バスというよりは、遊園地のアトラクションに近い感覚であった。
運転席は車庫まで回送する必要があるため、バスのような計器やハンドル、ギアレバーがあったが椅子にはマスコットのモリゾー・キッコロの大きなぬいぐるみが置いてり、さながら運転しているかのようでもあった。筆者も会場内の移動でよく利用したが、バスの車両を使っているわけではないので空間が大きく車内の広さに驚いた。
音も振動も小さく静かに動き出すのは、まさしく未来の乗り物で感動したのを覚えている。ただしIMTSはEVではなく圧縮天然ガスを使用した低公害バスであった。ルート上の離れた場所に天然ガスステーションがあり、ずらっと並んだIMTSや手動運転で敷地に出入りする様子も見ることができた。ここでの知見は自動運転やEVあるいは隊列走行等の技術に応用されているのだろう。
余談だが、このシステム上で走行する際は正確にはバスではなく鉄道扱いだ。よって一般道路をバスとして運転する場合は自動車の運転免許だが、IMTSとして手動運転する場合は動力車操縦者運転免許が必要で免許種別は営業運転が第一種磁気誘導式電気車、自動運転不能時の回送や最寄り駅までの緊急運転だけならば第二種磁気誘導式電気車だった。
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