北海道東部の知床半島には、西側にウトロ・東側に羅臼の町があり、最大標高738mの峠道である国道334号「知床横断道路」で繋がっているが、この道は日本一開通期間の短い国道という異名を持っている。
文・写真:中山修一
(バスマガジンWeb/ベストカーWebギャラリー内に、知床半島を横断する路線バスの写真があります)
■とにかく気難しい絶景国道
日本一開通期間の短い国道と言われるのは、国道334号の知床横断道路が占める区間が、秋〜春にかけて積雪量が非常に多いため、毎年11〜4月頃まで閉鎖されるのが所以。
さらに、その年の開通後でも夕方〜早朝にかけてゲートを閉める期間があったり、天候次第で終日閉鎖になることもあるため、通れるチャンスはより絞られる。
いつでも好きな時に通れるわけではない気難しさから、マイカーやレンタカーで単純に通過できただけでも、晩酌の一杯に旨味が増すほどの達成感を味わえる、アドベンチャー要素強めなドライブルートである。
景色の良さは折り紙付き。ただし天気が極端に変わりやすく、そう簡単に絶景を披露してくれないところが攻略のしどころであり、リピータブルな魅力でもある。
もし、一発で終始物凄く晴れた日に当たったら何モノにも変え難いほどの強運。その日はきっと良いことが続きそう。
■夏だけ走る幻のバス
北海道の東の果てに敷かれた国道ゆえ、地元周辺に住んでいない限り、そもそも行くまでが大変という強固なハードルを備えた知床横断道路であるが、なんとこの道筋を使ってウトロ〜羅臼の町を結ぶ路線バスが通っているのだ。
初めて知床峠をレンタカーで越えた際、頂上付近にバス停標識が立っているのに気付き「えっここバスあるの!?」と驚かされたもので、以降どんなバスなのかプロファイルが気になる存在であった。
そんなウトロ〜羅臼間を結ぶのは、斜里バスと阿寒バスが共同運行する路線。それぞれ名称がやや異なり、斜里バスは「羅臼線」、阿寒バスでは「羅臼ウトロ線」と称している。
注目すべきはバスの走る時期。知床横断道路が閉鎖する冬季は運休するのはもとより、国道の開通期間をフル活用して運行するわけではなく、バスが姿を見せるのは夏の間だけ。
2025年度は7月1日〜9月15日までと、わずか2カ月半くらいの間。全国的に見て“幻の路線バス”の一つに数えて良さそうだ。
さらに、夏季となれば旅行にかかる各種料金が繁忙期で高騰するほか、ホテルや交通機関の予約等も狭き門になりがち。
時期や費用面・バスの走る場所を加味、トータルバランスで考察するなら、乗るのがめちゃくちゃ難しいバスということになる。
■羅臼線に乗りに行く
予てより気になっていた、斜里バス/阿寒バスの羅臼線。2025年9月上旬にようやくウトロ方面に向かう機会を得て、バスのプロファイルを確かめに行った。
当日は低気圧の通過により荒天。最も近いエリアを通るJR釧網本線は夕方まで運休が決まり、果たしてバスが動くか不安になったものの、羅臼線は平常通りだった。
羅臼線はウトロ温泉バスターミナル〜羅臼営業所間およそ32.2kmの距離を、国道334号知床横断道路経由で結ぶ一般路線バスで、2025年度は上下1日4本ずつの運行であった。
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