全国に25,000以上あると言われる路線バスの中で、都県境を越える一般路線バスとなれば、極端なまでに数が減る。そんな県境越えバスの様子を見に行くシリーズの第19弾目くらいに訪れたのは、群馬県/栃木県をダイレクトに跨ぐ、関越交通「湯元温泉線」だ。
文・写真:中山修一
(バスマガジンWeb/ベストカーWebギャラリー内に、関越交通湯元温泉線の写真があります)
■山が隔てる群馬県と栃木県の境目
群馬県と栃木県は隣り合わせの位置関係にあるが、平地で繋がっている部分は少なく、両県が面する大部分を山が隔てている。
そんな環境の中、日光白根山をはじめ標高2000m級の山々が聳える北部に、群馬県〜栃木県の間を山越えで繋ぐルート・国道120号が通っている。
国道120号のうち、県境のかかる金精峠と呼ばれる区間が冬季閉鎖されるため、通行可能な時期が限られる希少性に目を引かれるところであるが、なんとこの国道120号と金精峠を経由して、群馬県〜栃木県をシームレスに結ぶ県境越え系路線バスが通っているのだ。
■関越交通「湯元温泉線」
両県を山方面からアプローチする県境越え路線バス……群馬県の民営バス事業者・関越交通が運行する「湯元温泉線」がそれにあたる。
湯元温泉線は、群馬県の北北東・片品村にある「鎌田」停留所と、奥日光とも呼ばれる栃木県の「湯元温泉」停留所の間、およそ36kmの区間を結ぶ一般路線バスだ。
路線名は湯元温泉線であるが、バス停の時刻表などには「片品尾瀬・日光白根山ロープウェイ・湯元温泉」と、バスの主な経由地が路線名の代わりに記されていることもある。
■48/365日の極レアさん!?
群馬県側/栃木県側ともに、鉄道駅から遠く離れた場所同士を繋ぐ、極めてディープなエリアを受け持つところに、県境越え系バスの希少性に増して物珍しさを感じる。
それだけでなく、運行形態もまた相当異色な設定。1日3往復という少なさに加え、バスが走るのは土日祝のみと超極細。
しかも運行期間が6〜10月までに限定され、2025年は年間運行日数が48日しかない極レアな存在である。
■一途に峠を攻めるプロ
湯元温泉線を利用しようとなれば、時刻をしっかり狙ってから臨むのが無難なところ。群馬県側から向かうとして、始発の「鎌田」停留所へは、JR上越線の沼田駅から関越交通の鎌田線で50分ほど。
現地訪問時、湯元温泉線には中型路線車の日野レインボーIIが使用されていた。中乗り・前降りの整理券運賃後払い方式で、交通系ICカードも使えて便利。
バスが出発すると、鎌田停留所のある片品村の主要道でもある国道120号にすぐ入り、ほぼ道なりに進んでいく。
鎌田の標高は約800mあり、乗車時点で結構な高所まで来ているのだが、進む先に聳える2,000m級の山を越えるべくダイナミックな上り坂が続き、峠攻めをする力強さが直に伝わる。
■ディープな寄り道
30分強進むと、ゲレンデやキャンプ場ほか山遊びの各施設が揃う「日光白根山ロープウェイ」の駐車場脇に入り、ここで4分停車。
その後、また上り坂を走り始めるが、途中で国道120号から一旦外れ、昭和初期に水力発電のダム湖として活用が始まった天然湖・丸沼の奥にある丸沼温泉に立ち寄る。
丸沼温泉へと続く道は終端が行き止まりのため、往復4kmの寄り道ルート。曲がりくねった狭隘区間をテクニカルに走り抜け、美麗なレイクビューをささやかに楽しませつつ、迫力に満ちた走行シーンを提供してくれる。
コメント
コメントの使い方