2023年の流行語大賞が「アレ」に決まったようだ。記者的には「運転士不足」だったのだが、それはそれとして、全国的に運転士不足を理由に減便や路線廃止ラッシュになっている。完全自動の無人運転はまだ遠い将来の話なので、喫緊の課題は運転士を確保するための方策だろう。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
(写真はすべてイメージで本文とは関係ありません)
■2024年には大量減便と路線廃止ラッシュ?
早速、2024年のダイヤ改正から減便や路線廃止をアナウンスしている事業者が次から次へと出てきて、特に地方新聞あたりは大騒ぎで速報している。ずいぶん前からそうなることは予想できていたのだろうが、事実として出てくると報道の論調は「運転士不足」という理由だけが独り歩きして、解決方法に言及した報道は少ない。
それでも、事業者運転士確保の取り組みやイベントを紹介した報道もちらほら見かけるようになった。総じて、運転体験や車庫(営業所)の見学会で、ソフトな印象が目立つ。
しかし現実はそう甘くはなく、一般に向けた各種のイベントはまったくとは言わないが、芳しくない。要するに根本的な問題解決を見ずに、もはや運転士になろうという人材は集まらないということだろう。
■柔軟性に欠ける行政
こうした社会インフラの崩壊に対して行政もただ黙って見ているわけではないのだが、その支援は従前と変わらぬものであったり、遅きに失した施策だったりと、こちらも芳しくない。
いまさら事業者に対して大型二種免許の取得費用を助成しても、応募者がない状態では全く無意味だ。公共交通機関がなくなって困るのは住民なのだから、受益者負担とも言っておれず運転士の賃金そのものを助成(会社既定の賃金に上乗せする助成)くらいはしなければ、間に合わないと思われる。そういうことを地方議会が真剣に議論しないと住民の理解も得られようがない。
■確かにいるのは間違いない!
事業者や行政の努力は言うまでもないが、運転士の仕事を守るためには例えば、モンスタークレーマーへの対応マニュアルや法的な枠組みは必要だろう。一層、世知辛い世の中になるのかもしれないが、確かに理不尽なクレーマーは存在する。
ワンマンで運転する運転士は安全にバスを運行するほかに、車内の秩序と治安を守ることも重要なのである。そのためには、大型船舶の船長や航空機の機長、あるいは旧国鉄職員のような司法警察権や拘束権限を付与せよとまでは言わない。
しかし乗車を拒否する権限くらいは法律で認めないと、待遇だけではなく精神的にも参ってしまう。そういうことまで法律で規定しなければならない時代なのは悲しいことだが、現実なので仕方がないのかもしれない。
すべての事業者に労働組合があるわけではないだろうが、事業者だけではなく労働者の側に立って労働環境や待遇改善を推し進めていくはずの組合は、今まで待遇面や精神的な重圧について何も問題にしてこなかったのだろうかという疑問もある。
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